[SK047:相続]高層マンション購入による相続税対策の注意点

近年、土地評価額の算定方法に着目した相続税対策として『現金の代わりに高層マンションを購入すると相続税が安くなる』といった話が知られるようになりました。しかしそれにはもちろんお得な面だけでなくリスクもいろいろあります。

高層マンション購入による相続税対策の注意点は例えば次のようなものが挙げられるでしょう。

まず最初に、相続税対策で購入したマンションがその後に高く売れるとは限りません。しかも建物は経過年数が増えていくと価値が下がり続けてしまいます。

次に2017年度の税制改正でマンションの高層階の固定資産税が高くなりました。これによりせっかく高層マンションを購入して相続税を下げたとしても逆に固定資産税が上がってしまうケースがあります。さらに今後はこのような節税対策に対抗するために相続税自体も見直されるかもしれません。

しかもマンションのような不動産は現金と違って分けられません。そのため相続人同士のトラブルの原因になりやすいという一面もあります。

もともとこの方法は、富裕層の抜け穴的な位置づけである面が大きく、様々なリスクもあります。話のタネにはいいですが、一般的にお勧めするものではないと思います。

[SK046:相続]高層マンションの相続税

『相続税対策のためには高層マンションの購入が有効である』という話を聞いたことはないでしょうか。

確かにこの方法で節税対策になることがあるのは事実です。その大まかな理屈は次の通りです。

不動産には評価額があります。これを『不動産評価額』といいます。不動産評価額は『建物』と『土地』のそれぞれの評価額を合算したものです。

ここで重要なのは土地の評価額の算定方法にあります。自分の持ち分の土地は狭ければ狭いほど土地の評価額が低く算定されるのでそのぶん税金が安くなります。

一戸建て住宅の場合、敷地全部が自分の持ち分となります。しかしマンションの場合は違います。

マンションの場合、敷地を戸数で割った広さだけが自分の持ち分となります。仮に20戸のマンションであれば敷地全体の20分の1だけが自分の持ち分です。

さらに戸数が100戸や200戸もある高層マンションではより細かく分割され、土地の評価額が100分の1や200分の1となります。そのため税金がさらに安くなるはずである、という理屈です。

しかし、この方法は様々なリスクを伴う事も事実です。相続税対策としてより、自宅購入の際に一戸建てかマンションかの選択に迷った時の判断材料のひとつとしてぐらいに捉えた方がよいでしょう。

[SK045:相続]相続税の基礎控除額

相続税には申告不要(相続税がかからない)金額の範囲が設定されています。これを『基礎控除額』と呼びます。

基礎控除額 = 3,000万円+法定相続人数×600万円

例えば遺産が5,000万円あったとします。この5,000万円全額が相続税の課税対象となるわけではありません。仮に法定相続人が息子一人だった場合、上記の計算式に当てはめると、基礎控除額は、3,000万円+600万円=3,600万円となります。すると相続税の課税対象額は5,000万円ではなく、5,000万円から3,600万円を差し引いた1,400万円だけとなります。(なお、1,400万円をもとに実際に計算すると相続税は160万円となります。)

現在の基礎控除額の計算方法は2015年改正後のものです。昔はもっと基礎控除額が大きかったのですが残念ながら減額されてしまいました。とはいえ、今でも大きなメリットであることに変わりはありません。簡単に計算できますし基礎控除額は早めに把握されておくことをお勧めします。

[SK044:相続]居住用不動産の生前贈与の優遇措置

昨年2018年7月6日に『民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律』が成立しました。この法律は相続手続の改正法で、(一部を除き)2019年7月1日が施行日となっています。いよいよ来月からスタートです。

この改正法の特徴をひとことで言うと「超高齢化社会を見据えた充実の配偶者優遇措置」です。

例えば居住用不動産の贈与などに関する優遇措置』。これは婚姻期間20年以上の夫婦間の場合、居住用不動産の生前贈与・遺贈を遺産の先渡しと取り扱う必要がなくなる、という新しい措置です。

それでは法改正前の相続では、自分の死後に妻が住む場所に困らないようにと考えた夫が「生前に妻へ家を贈与した」場合、どうなるのでしょうか。実はこの場合、「遺産の先渡し」としてこの家も相続計算に「含まれて」しまいます。

するとこの場合、「妻は生前贈与を受けた” 家 ”という相続財産を先に貰っている」ことになります。となると、その分、その他の預貯金などの相続財産が少なくなります。そのため妻は生活費などに困り、結局夫から生前贈与までしてもらった家を手放さねばならなくなることもありました。

それが今回の法改正では、妻が生前贈与を受けた居住用不動産は(条件を満たせば)相続計算の対象とならなくなったので、妻にとっては生前贈与された家が原因で預貯金の相続分が減ってしまうような事がなくなりました。

[SK043:相続]遺留分の概念

遺留分というのは、相続人が相続できる最低限の遺産配分(取り分)のことです。遺留分を主張できる権利は優先度が高く、たとえ被相続人本人の意思である『遺言』をもってしても害することはできません。遺留分には相続人の生活保障、セーフティーネットの役割があります。

遺留分について以下にまとめておきます。

■遺留分権利者

・配偶者(妻や夫)
・子
・直系尊属(親)


■遺留分割合

法定相続分の半分


■消滅時効

相続が開始していることと、自分の遺留分が侵害されていることの両方を知った時から1年(除斥期間10年)

さらに遺留分について押さえておきたい実務上の知識としては、

 『兄弟姉妹には遺留分がない』

 『子には代襲相続の者も含まれる』

 『胎児でも出生すれば遺留分減殺請求権が認められる』

などがあります。

[SK042:相続]借家権・借地権の相続

借家権や借地権は相続の対象になります。借家権や借地権は一般的に財産権として解されているためです。

借地権は生前贈与と相続とでは扱いが異なるので注意が必要です。

例えば地主の承諾について。借地権を生前贈与する場合、その土地の地主の承諾が必要です。しかし相続の場合、地主の承諾は必要ありません。

名義書換料についても、生前贈与の場合は必要となりますが、相続の場合は必要ありません。

相続とは第三者への譲渡ではなく、本人に成り代わって引き継いだ権利義務だからです。

[SK039:相続]慰謝料請求権の相続

慰謝料請求権とは、精神的苦痛に対する損害賠償請求権の事です。さて、この慰謝料請求権ははたして相続の対象となるのでしょうか。

結論からお話ししますと、慰謝料請求権は相続の対象となります。判例では被相続人が不法行為により精神的苦痛を受けた被害者であり、この人が存命中にもし機会を与えられていれば慰謝料請求をしていたであろうという事が認められるのであれば、慰謝料請求権は相続人へ相続されるとしています。

なお、慰謝料請求権には上記の『相続肯定説』と対立する『相続否定説』という有力な説もあります。相続否定説では慰謝料請求権を被相続人の一身専属的なものととらえます。この考え方では、被害者(被相続人)が生前に慰謝料請求権を実際に行使していない限り、慰謝料請求権の相続は認められません。

[SK037:相続]一身専属権とは

一身に専属する権利(一身専属権)とは、その人個人の持つ権利義務のうち、その性質上、他の者に移転することのないものを指します。一身専属権は相続や譲渡ができません。

一身専属権のわかりやすい例としては自動車の運転免許が挙げられます。あたりまえのことですが、たとえ夫の全財産を相続した妻であっても、夫の運転免許証でクルマの運転ができるようになるわけではありません。

主に相続で問題となる一身専属権には、以下のものがあります。

■一身専属した権利義務の例

・生活保護の受給権
・委任関係における地位(委任者又は受任者としての地位)
・代理関係における地位(本人又は代理人としての地位)
・組合員、合名会社の社員、合資会社の無限責任社員の地位
・身元保証債務
・信用保証債務

[SK036:相続]遺言書作成がもっと身近になりました

遺言は『この人には財産を多く遺してあげたいけど、あの人には財産をあまり相続させたくない』というような場合に必要となります。

とはいえ、遺言を自分で書くのはどうしても敷居が高く面倒なイメージがあります。

実際、自分で遺言を書く、いわゆる自筆証書遺言では、以前から『本文と財産目録(預貯金、不動産など)をすべて自筆させることに無理がある』と言われていました。

例えば敷地権付きマンションの不動産登記などを間違いなく自筆することは、若い方でも難しく、ましてやご高齢の方であればなおさらです。

そんな中、平成31年1月13日より自筆証書遺言の書き方が変わりました。

これまでは全文自筆でなければ自筆証書遺言として認められなかったのですが、法改正後は『本文自筆+財産目録代筆』なども可能となりました。

この法改正により、一番面倒な財産目録の作成部分を行政書士にお願いできるようになりました。あとはご自身で本文を数行書いて押印するだけで遺言書が完成します。ずいぶんと身近になりました。

[SK036:相続]遺言執行者

遺言に従って実行する人を遺言執行者と言います。遺言執行者は家族であったり外部の専門家であったりと様々です。

遺言執行者は遺言の執行を全面的に行う権限を持ちます。そのため遺産は遺言執行者が責任を持って各相続人に分配することになっています。

遺言執行者が遺言書に書かれていたら他の者が勝手に遺言を執行してはいけません。遺言執行者へすぐに連絡を取りましょう。

遺言執行者が指定されていなかった場合は相続人達で協議して遺言を執行します。もし、遺言執行者があいまいでは困る、という場合には家庭裁判所に適任者を選任してもらうとよいでしょう。