[HM016:民法大改正]第九八条の二(意思表示の受領能力)<1/3>

民法第98条の2は『意思表示の受領能力』に関する条文です。改正後は『意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき』が追加されました。

<改正後:第98条の2>
(意思表示の受領能力)
 意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を
有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であっ
たときは、その意思表示をもってその相手方に対抗すること
ができない。ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った
後は、この限りでない。
一 相手方の法定代理人
二 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方
<参考><改正前:第98条の2>
(意思表示の受領能力)
 意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者
又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもって
その相手方に対抗することができない。ただし、その法定
代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。

『意思表示の相手方』とは、意思表示を(する側でなく)受け手を指します。この意思表示の相手方が未成年者や成年被後見人の場合、その人に対し「きちんと説明した」とか「お互い合意したはずだ」とか「契約書だってある」などといくら主張したとしても、相手方の側から「そんなこと知りません」と否定されたら、それを拒否する(対抗する)ことはできません。

[HM015:民法大改正]第九七条(意思表示の効力発生時期等)<3/3>

民法では意思表示の効力発生時期について『到達主義』を採用しています。今回の法改正では『隔地者』に限定していた97条の条文からその制限を撤廃するなど、実態に合わせた条文変更がありました。

<改正後:民法第97条>
1. 意思表示は、その通知が相手方に到達した時から
その効力を生ずる。
2 .相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達す
ることを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきで
あった時に到達したものとみなす。
3 .意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、
意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときで
あっても、そのためにその効力を妨げられない。
<改正前:民法第97条>
1. 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に
到達した時からその効力を生ずる。
2. 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発し
た後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであって
も、そのためにその効力を妨げられない。

3項では、本人の意思表示は、それが相手方に到達する前に本人の『死亡』『意思能力の喪失』『行為能力の制限』のいずれかがあったとしても、効力は失われないとしています。

新条文では旧条文では明記されていなかった『意思能力の喪失』が追加され、『行為能力の喪失』が『行為能力の制限』という表現となりました。これにより、適用範囲が広がり、より判例に近い条文になりました。

[HM014:民法大改正]第九七条(意思表示の効力発生時期等)<2/3>

民法では意思表示の効力発生時期について『到達主義』を採用しています。今回の法改正では『隔地者』に限定していた97条の条文からその制限を撤廃するなど、実態に合わせた条文変更がありました。

<改正後:民法第97条>
1. 意思表示は、その通知が相手方に到達した時から
その効力を生ずる。
2 .相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達す
ることを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきで
あった時に到達したものとみなす。
3 .意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、
意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときで
あっても、そのためにその効力を妨げられない。
<改正前:民法第97条>
1. 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に
到達した時からその効力を生ずる。
2. 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発し
た後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであって
も、そのためにその効力を妨げられない。

2項では相手方に受領拒絶をされた場合の判例を反映した条文です。

手紙を例にした場合、『到達』とは、相手方が実際に手紙を受け取ったり封を開けて読んだとき、という意味ではありません。相手方の勢力範囲(郵便受けなど)に手紙が届きさえすれば、到達したものと認められます。

ですので、そこを逆手にとり、郵便受けを故意にふさいで受領拒否をし、借金の督促状などの『到達』を防ぐことも考えられます。

2項ではそのような妨害工作による受領拒否をしても到達の効力を認めるものとしています。

[HM013:民法大改正]第九七条(意思表示の効力発生時期等)<1/3>

民法では意思表示の効力発生時期について『到達主義』を採用しています。今回の法改正では『隔地者』に限定していた97条の条文からその制限を撤廃するなど、実態に合わせた条文変更がありました。

<改正後:民法第97条>
1. 意思表示は、その通知が相手方に到達した時から
その効力を生ずる。
2 .相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達す
ることを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきで
あった時に到達したものとみなす。
3 .意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、
意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときで
あっても、そのためにその効力を妨げられない。
<改正前:民法第97条>
1. 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に
到達した時からその効力を生ずる。
2. 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発し
た後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであって
も、そのためにその効力を妨げられない。

「日本酒を注文します」、「布団をクーリングオフします」など相手方への意思表示は、相手方に到達した時点で効力が発生します。これを『到達主義』といいます。おもに手紙など日数を要する意思表示の際に必要となる概念です。

そのため旧民法の97条では隔地者間の意思表示に限定して明文化していましたが、あえて隔地者間に限る必要性もないことから、『隔地者』という文言を取り払いました。

[SK057:相続]遺留分減殺請求制度の見直し

2018年7月に民法が改正されたことにより、2019年7月1日から、遺留分減殺請求制度が見直されました。

改正前の制度では、遺留分減殺請求権の行使によって「共有」状態が当然に生じていたため、これが事業承継の支障になっている、という指摘がありました。

例えば、相続により遺言に基づいて長男への事業承継が発生したとします。ここで他の相続人たちが遺留分減殺請求権を行使したとします。すると長男が承継した会社の土地や建物に、他の相続人たちによる複雑な共有関係が入り込んでしまうこともあったわけです。これでは長男も困りますし、長男へ遺贈した者の意思も尊重されていません。

そこで今回の法改正では、遺留分減殺請求によって生ずる権利は「金銭債権」と定められました。このため、遺留分減殺請求権の行使によって「共有」状態が当然に生ずることを回避できるようになったのです。

先程の遺留分減殺請求の例でいきますと、他の相続人達については、長男が承継した会社の土地や建物に関する共有状態が当然に生ずることにはならなくなりました。その代わり、自分の持ち分を長男に「金銭」で請求することはできる、というわけです。

[SK056:相続]遺産分割に関する民法改正

被相続人が亡くなったあとに相続人が複数いる場合、これら共同相続人全員で遺産分割協議を行って遺産分割を行います。

ここで、被相続人である父親の預金口座のキャッシュカードを管理していた長男がいたとします。そして、父親の預金が他の共同相続人達へ遺産分割されてしまうのを嫌がった彼が、父親の預金を勝手に引き出して、さっさと使い込んでしまったとします。さてこの場合、そのおカネは遺産分割の対象とできるのでしょうか。

これまでの民法では、相続開始後に処分されてしまった財産は遺産分割の対象から「外す」こととされていました。今回のように、相続開始後に長男によって使い込まれてしまったおカネも例外ではありません。そのため他の共同相続人にとって大変不公平な制度でした。

そこで2019年7月1日に民法の相続法が改正されました。その中で「遺産分割前に遺産に該当する財産が処分されてしまったとしても、共同相続人全員の同意があれば、その財産を遺産分割の対象に含むことができる」ことになりました。そして(ここがポイントなのですが)、この共同相続人には財産を処分した当人を含める必要がありません。つまり今回のケースでは、(使い込みをした)長男の同意がなくとも、他の共同相続人たちが全員同意すれば遺産分割が可能になったというわけです。

[SK034:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(後妻の相続権)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

言い換えると、今回新たに導入された遺産分割の特例措置により、夫を亡くした妻は遺産分割の際に自宅を手放すことなく、安心して遺産相続をすることができるようになった、という事です。

しかしこれでは、夫が後妻を迎えていた場合、別の問題が懸念されます。例えば次の場合はどうでしょう。

ここに夫婦と息子ふたりの4人家族があります。ある日この夫婦が離婚をして妻が出て行きました。そして夫はすぐに若い後妻を迎えました。このあと夫はこの後妻に家を生前贈与し、ほどなくして亡くなくなりました。

さて、ふたりの息子たちからすると心中穏やかではありません。なぜなら今回の法改正による遺産分割の特例措置では、妻が夫から贈与された自宅は遺産分割協議の対象外です。息子たちからすると、急に現れた血の繋がりもない若い後妻に自宅を丸ごと持っていかれてしまうと思ってしまうのも無理ありません。実際、遺産相続で揉めやすいのはこのケースです。

そこで今回の法改正では対策が取られています。今回の遺産分割の特例措置は結婚期間が20年以上であることが条件となっています。

よって上記の事例でも、後妻の結婚期間が20年以上にならない限り特例措置の対象とはならず、自宅も含めて相続人全員で遺産分割を行わなければならない、という事になります。

[SK033:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(改正後の計算方法)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

例として自宅2,000万円と現金2,000万円、計4,000万円の財産を持つ夫が死亡したとします。夫には同居の妻と別居のふたり息子がいた場合、妻が生前贈与や遺言で自宅を譲り受けていたとすると、妻への遺産分割はどうなるでしょうか。

これまでの法律ですと、自宅だけで法定相続分を全額相続してしまっている妻は現金をいっさい相続できず、当面の生活費に困ってしまうという事が起きていたりしました。

そこで今回の法改正では、妻が夫から生前贈与や遺贈で譲り受けた自宅は遺産分割の対象外となりました。

法改正後の計算では、まず妻は生前贈与や遺贈で受けた2,000万円の自宅をそのままもらえます。さらに遺産分割の対象である現金2,000万円のうちの二分の一、すなわち現金1,000万円も妻は相続できます。よって妻は計3,000万円を相続します。そして息子は残りの現金1,000万円をふたりで500万円ずつ遺産分割します。

このように新しい法律では、相続によって配偶者が自宅を手放さなければならなくならないよう、配偶者を手厚く保護するようになりました。

[SK032:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(改正前の計算方法)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

これは、亡くなった夫(妻)と同居していた配偶者にとって、自宅というものは特別な意味を持っており、他の相続財産よりもより守られるべきである、との観点から法改正がなされたものです。

例として自宅2,000万円と現金2,000万円、計4,000万円の財産を持つ夫が死亡したとします。夫には同居の妻と別居のふたり息子がいた場合、妻が生前贈与や遺言で自宅を譲り受けていたとすると、妻への遺産分割はどうなるでしょうか。

まずは法定相続分の計算です。妻と息子、それぞれが二分の一(2,000万円)ずつです。息子は二人いるので息子一人あたりは四分の一(1,000万円)です。

ここで従来の法律ですと、妻に生前贈与や遺贈で譲った自宅も遺産分割の対象に含んで相続計算をします。このような自宅は共同相続人への遺産の前渡しと考えるためです。

すると妻は法定相続分2,000万円をすでに自宅という形で全額相続していることになります。これでは残った現金2,000万円はすべて息子二人に相続されてしまい、妻に現金が全く渡らなくなってしまいます。夫を失った妻は当面の生活費もなくなり困ってしまうでしょう。自宅を売却しておカネを工面しなくてはならなくなるかもしれません。

このように、これまでの法律では、夫の財産を相続することによって妻がかえって自宅を手放さなくてはならなくなる、ということも起こりえていたわけです。

[SK031:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(用語の説明)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

そこで今回は解りにくそうな用語のご説明をします。

まずは『贈与』と『遺贈』です。例えば夫が亡くなった夫婦の場合、贈与とは、夫が『生前に』財産を妻に与えることです。一般的に『生前贈与』と呼ばれているのはそのためです。他方、遺贈とは夫が『死後に』遺言によって財産を妻に与えることです。

次に『特別受益の持戻し』です。遺贈や贈与をすると遺産から外れてしまうと考えがちですが少し違います。たしかに、相続人でない第三者への遺贈や贈与は遺産から外れます。しかし今回のように夫から妻への贈与や遺贈は、相続人への遺産の前渡しによる『特別受益』として扱われます。

特別受益は遺産分割の計算をする際に一旦、相続財産に戻してから計算することになっています。これを『特別受益の持戻し』と言います。