[SK039:相続]慰謝料請求権の相続

慰謝料請求権とは、精神的苦痛に対する損害賠償請求権の事です。さて、この慰謝料請求権ははたして相続の対象となるのでしょうか。

結論からお話ししますと、慰謝料請求権は相続の対象となります。判例では被相続人が不法行為により精神的苦痛を受けた被害者であり、この人が存命中にもし機会を与えられていれば慰謝料請求をしていたであろうという事が認められるのであれば、慰謝料請求権は相続人へ相続されるとしています。

なお、慰謝料請求権には上記の『相続肯定説』と対立する『相続否定説』という有力な説もあります。相続否定説では慰謝料請求権を被相続人の一身専属的なものととらえます。この考え方では、被害者(被相続人)が生前に慰謝料請求権を実際に行使していない限り、慰謝料請求権の相続は認められません。

[SK037:相続]一身専属権とは

一身に専属する権利(一身専属権)とは、その人個人の持つ権利義務のうち、その性質上、他の者に移転することのないものを指します。一身専属権は相続や譲渡ができません。

一身専属権のわかりやすい例としては自動車の運転免許が挙げられます。あたりまえのことですが、たとえ夫の全財産を相続した妻であっても、夫の運転免許証でクルマの運転ができるようになるわけではありません。

主に相続で問題となる一身専属権には、以下のものがあります。

■一身専属した権利義務の例

・生活保護の受給権
・委任関係における地位(委任者又は受任者としての地位)
・代理関係における地位(本人又は代理人としての地位)
・組合員、合名会社の社員、合資会社の無限責任社員の地位
・身元保証債務
・信用保証債務

[SK031:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(用語の説明)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

そこで今回は解りにくそうな用語のご説明をします。

まずは『贈与』と『遺贈』です。例えば夫が亡くなった夫婦の場合、贈与とは、夫が『生前に』財産を妻に与えることです。一般的に『生前贈与』と呼ばれているのはそのためです。他方、遺贈とは夫が『死後に』遺言によって財産を妻に与えることです。

次に『特別受益の持戻し』です。遺贈や贈与をすると遺産から外れてしまうと考えがちですが少し違います。たしかに、相続人でない第三者への遺贈や贈与は遺産から外れます。しかし今回のように夫から妻への贈与や遺贈は、相続人への遺産の前渡しによる『特別受益』として扱われます。

特別受益は遺産分割の計算をする際に一旦、相続財産に戻してから計算することになっています。これを『特別受益の持戻し』と言います。

[TS007:宅建試験]用語の定義

『用語の定義』に関する過去問をアレンジしました。〇か×かで答えましょう。

 

問1.用途地域内の農地は宅地に該当する。

答1.○


問2.他人の所有する複数の建物を借り上げ、その建物を自ら貸主として不特定多数の者に反復継続して転貸する場合、免許が必要である。

問2.× 自ら行う貸借は宅建業の取引に該当せず、免許不要。


問3.Bが自己所有の宅地に自ら貸主となる賃貸マンションを建設し、借主の募集及び契約をCに委託した場合、BもCも免許を受ける必要がある。

答3.× Bは自ら行う貸借なので免許は不要(⇒問2.)。Cは業として貸借の媒介をしており免許が必要。


問4.C社が乙県にのみ事務所を設置し、Dが丙県に所有する1棟のマンション(10戸)について、不特定多数の者に反復継続して貸借の代理を行う場合、C社は乙県知事の免許を受けなければならない。

答4.○ 丙県は関係なし。


問5.都市計画法に規定する工業専用地域内の土地で、建築資材置き場の用に供されているものは宅地に該当する。

答5.○ 『都市計画法に規定する工業専用地域内の土地』=『用途地域内の土地』なので、道路・公園・河川・広場・水路以外は全て宅地となる(⇒問1)。

[HM012:民法大改正]第九六条(詐欺又は強迫)<4/4>

民法第九六条(詐欺又は強迫)において、2項の第三者詐欺の成立要件と、3項の詐欺取消時の第三者保護要件が、それぞれ判例に沿った内容に修正されました。

<改正民法>
1.詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2.相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3.前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

<参考:改正前民法>
1.詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2.相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3.前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

96条は詐欺と強迫についての意思表示の取り消しに関する条文です。詐欺については、特に2項の第三者詐欺や3項の第三者保護規定が絡むと混乱しがちになりますが、強迫については特に改正もなく実にシンプルです。

これは条文を丁寧に読むと分かるのですが、1項には『詐欺又は強迫』と書かれているのに、2項と3項はわざわざ『詐欺』としか書かれていません。よって強迫については1項だけが適用されます。

よって強迫については、『強迫された本人は(相手や第三者の善意や悪意に関わらず)とにかく意思表示の取り消しができる』のです。

なお、今回の改正では2項と3項の詐欺についても過去の判例を反映しています。まずはざっくりと『詐欺にあった本人は以前よりもさらに保護されるようになった』と理解しておきましょう。

[HM011:民法大改正]第九六条(詐欺又は強迫)<3/4>

民法第九六条(詐欺又は強迫)において、2項の第三者詐欺の成立要件と、3項の詐欺取消時の第三者保護要件が、それぞれ判例に沿った内容に修正されました。

<改正民法>
1.詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2.相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3.前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

<参考:改正前民法>
1.詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2.相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3.前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

例えば、相手方Aが本人Bに「Bの持っているここの土地は近い将来必ず値崩れする。その前に急いで売ったほうがいい。」と嘘をつきました。そして騙されたBはAと売買契約を結んでその土地をAに売り、Aへの所有権移転登記を終えてしまいました。しめしめと思ったAはその後すぐに第三者Cにその土地を転売し、Cへの所有権移転登記を終えてしまいました。その後、ようやくBはAに騙されていたことに気が付きました。

さてこの場合、BはAとの売買契約を取り消して、Cに渡ってしまった自分の土地を取り戻すことができると思いますか。

答は『Cの状況次第』となります。この場合(BがAに騙されていたという)事情についてCが『過失なく』知らなかった場合には、残念ながらBはAとの売買契約を取り消してCから土地を取り戻すことができません。これが96条3項です。とはいえ今回の改正でCが保護される要件は厳しくなっています。Cは単に知らなかっただけでは保護されず、『過失がなかった』ことも要求されるようになりました。

[HM010:民法大改正]第九六条(詐欺又は強迫)<2/4>

民法第九六条(詐欺又は強迫)において、2項の第三者詐欺の成立要件と、3項の詐欺取消時の第三者保護要件が、それぞれ判例に沿った内容に修正されました。

<改正民法>
1.詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2.相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3.前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

<参考:改正前民法>
1.詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2.相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3.前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

さて、この条文でややこしいのは、登場人物が3人に増えた場合です。例えば、相手方Aがセール品の腕時計を持っていたとします。そして昨日、Aがいないところで第三者Cが本人Bに対し、「実はAの持っているあの腕時計は大変価値のあるものなのだよ」とBを騙していました。その結果、BはAと売買契約をしてそのセール品の腕時計を高値で買ってしまいました。

さてこの場合、BはAに対して売買契約の取り消しができるのでしょうか。

答は『Aの状況次第』となります。つまりAが(BがCに騙されていたという)事情を知っていたり、または知ることができたはずなのに落ち度があって知らなかったのであれば、BはAとの売買契約を取り消すことができます。反対に、Aはそんな事情を知らないし、そのことについて落ち度もないとすれば、BはAとの売買契約を取り消せません。騙されたBの方がAよりも悪いからです。これが96条2項です。

このように今回の改正では、Aが事情を『知っていた』場合はもちろん、単に『知ることができた(けど、過失があって知らなかった)』場合でもBは保護されるということが、明文で規定されました。

[HM009:民法大改正]第九六条(詐欺又は強迫)<1/4>

民法第九六条(詐欺又は強迫)において、2項の第三者詐欺の成立要件と、3項の詐欺取消時の第三者保護要件が、それぞれ判例に沿った内容に修正されました。

<改正民法>
1.詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2.相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3.前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

<参考:改正前民法>
1.詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2.相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3.前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

例えば、相手方Aが本人Bを騙し、どこにでもあるチープな時計をレアものだと言って高値で売りつけたとします。この場合、騙されたことに気が付いたBは、96条1項によりこの売買契約を取り消すことができます。ここまでは実際の肌感覚に近いので理解しやすいと思います。

[HM008:民法大改正]第九五条(錯誤)

民法九五条(錯誤)において、錯誤に基づく意思表示は『無効』から『取り消し』に変更されました。


<改正民法>
1.意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。 

<参考:改正前民法>
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

 

『意思表示の錯誤』には2種類あります。ひとつは『表示の錯誤(例:金額の表記ミスに基づく買い物)』。もうひとつは『動機の錯誤(例:レアものと勝手に勘違いした買い物)』があります。なお、動機の錯誤は表意者の心の中だけのことなので、何かしらの表示がないと「すみません、勘違いでした。今のは無しで。」などとは主張ができません。

改正前の民法では、錯誤による意思表示は『無効』(=誰でもいつでも無かったことにできる)と書かれていましたが、改正民法では『取り消し』(=表意者だけが無かったことにできる)に書き換わっています。これはなぜかというと、既に過去の判例で、『錯誤における無効とは、限りなく取り消しに近い』という考えが示されていました。今回の改正ではその考えを踏襲し、分かりやすく整理して条文化されたものだといえます。

[HM007:民法大改正]第九三条(心裡留保)

民法九三条(心裡留保(しんりりゅうほ))において、『表意者の真意』の表現がより実態に即したものになりました。あわせて第三者保護規定も第二項に追加されました。

 

<改正民法>
第九三条①  意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

<参考:改正前民法>
第九三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

 

心裡留保とは、いわゆる冗談のことです。例えばAさんが友達のBさんに「ロレックスの高級腕時計を君に10円で譲ってやるよ」などと言ってきた場合のことです。心裡留保は原則として有効(取引成立)です。上記の例では原則的として冗談を言ったAさんが責任をもってBさんに10円でロレックスを譲らなければなりません。

ここで改正民法と改正前民法の条文を見比べてみてください。ちょっとした間違い探しです。どこが改正されたかわかるでしょうか。

答えは、1項但し書きにある、『その意思表示が表意者の真意ではないこと』の部分です。改正前は『表意者の真意』と、さらっと書かれていました。これらは結局は似たことを言っているようにも取れますが厳密には少し違います。

改正前の『表意者の真意』となると、『Aさんがその冗談を言った本当の理由』を指してしまいます。これだと、「いやあ、Aさんが冗談を言っていたのはわかっていたけど、なぜそんなことを言ってくれたんでしょうね。本当の理由まではわからないなあ。」とBさんが言えば、取引が成立する余地が残されてしまうことになりました。

これが改正後の、『その意思表示が表意者の真意ではないこと』であれば、「なんでそんなことを言ってくれたのかはわからない。でも本当の理由はともあれ、ロレックスを譲るのはAさんの真意ではないな。」とBさんがわかるのであればそれだけで無効(取引不成立)となります。

これまでも法律上の解釈では後者の考え方が優勢でした。今回の改正ではその考え方を明文化したものとなります。