[SK009:相続]遺留分減殺請求と民法964条

ある人の遺留分が侵害されている内容の遺言書で遺贈があった場合でも、遺言書の通りに財産は振り分けられます。自分の遺留分を侵害された人は、遺留分の侵害を知った時から一年以内に「取り戻す」ことを請求(「遺留分減殺請求」という)することで、遺留分を取り戻すことができます。

さて先日、「遺留分を侵害している遺言書はそもそも民法964条により無効なのではないのか」とのご質問を受けることがありました。これは遺贈を定めた同条条文の但し書きにある「~ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。」の記述の解釈に関するご質問でした。

実はこの但し書きがまさに「遺留分減殺請求」を認めている部分となります。なので遺言書自体の有効無効を示したものではありません。実務上でも、遺留分を侵害している遺言書を添付して所有権移転登記の申請をしたとしても問題なく受理されます。

[SK008:相続]遺留分の割合

遺留分は「被相続人の財産の二分の一(直系尊属のみが相続人の場合は三分の一)を法定相続分で配分したもの」です。少し細かいですが、遺留分を計算する際の「被相続人の財産」には原則として「生前贈与」などの「特別受益」も含めます。そして主張できる相続人は「配偶者(夫や妻)」「子(代襲者も含む)」「直系尊属(親など)」だけであり、「兄弟姉妹」には遺留分がありません。

これを相続人の組み合わせ別でみると、

・配偶者のみ ・・・遺留分は[1/2]

・子のみ   ・・・遺留分は[1/2]

・配偶者と子 ・・・遺留分は[1/4](配偶者)、 [1/4](子)

・配偶者と兄 ・・・遺留分は[1/2](配偶者のみ)

・配偶者と父親・・・遺留分は[1/3](配偶者)、 [1/6](父親)

と、なります。

[SK007:相続]遺留分制度の概要

相続人となるべき人は法律で明確に定められていますが、「遺言」を残すことによって相続人以外の人にも財産を与えることができます。さらに遺言で残す財産の範囲も本人の自由となっています。

すると相続人のうちの誰かだけをえこひいきしたり、極論すれば相続人でもない他人(例えば愛人や知人など)に全財産を与えてしまうような事も起こりえることになります。しかしそれでは残りの相続人、例えば「残された家族」がお金に困り路頭に迷うことにもなりかねません。

そこで民法ではもともとの相続人(一部例外あり)が、ある程度の相続分を取り戻すことができるような制度を用意しました。これを「遺留分」制度と呼びます。