独立開業されている方たちは個人で賃貸マンションの一室を借りて、そこを事務所にしている方が結構いらっしゃいます。今回はこういった事務所が転借物件だった場合の契約解除に関するトラブルについてみてみましょう。
<事例>
マンションの区分所有者Aは不動産会社Bへマンションの一室を賃貸していました。そしてBは漫画家Cにこの部屋を転貸していました。ところがBは業績が悪化したためAへの賃料を滞納するようになり、とうとう昨年6月にBはAとの契約を解除されてしまいました。
AはBとの契約解除の一か月後、昨年7月にCにもそのことを告げて出て行ってもらいたい旨を伝えました。しかし、Cは仕事が忙しく、ついその後も事務所を利用し続けていました。結局Cが引っ越しをしてそのマンション出て行ったのは今年4月でした。
引っ越し後しばらくして、C宛てに封書が届きました。それはBからの請求書で、「昨年7月から今年4月まで事務所として利用していた10カ月分の家賃が支払われていないので至急支払うように」という内容でした。Cとしてもその部屋を使い続けていたのは事実でしたから家賃を支払う事に何の依存もありませんでした。そこでCがBへの支払い手続きを進めようとしていたところ、翌日、Aからも同じような内容の請求書が来てしまいました。
このようにCは事務所の家賃をAとBから二重に請求を受けてしまいました。Cはマンションの区分所有者Aと不動産会社Bのどちら宛てに家賃を支払えばよいのでしょうか。
答:マンションの区分所有者Aに支払えばよい
判例ではBがAへ家賃を滞納するなどして信頼関係が破壊されて契約解除に至った場合、BC間の転貸借契約も当然に終了すると判示しています。ですから漫画家Cが家賃を払う相手はBではなくAになります。
この場合、法律的には、CがAに支払ったおカネは賃料ではありません。Cが権原もないのに10か月間も部屋を占有し続けたことによる不当利得返還債務として転借料相当額を支払ったことになります。