民法第八十六条(不動産及び動産)において、3項にあった「無記名債権」が削除されました。
<改正民法>
第八十六条① 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
<参考:改正前民法>
第八十六条① 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
3 無記名債権は、動産とみなす。
「無記名債権」はその名の通り債権者名の書かれていない証券的債権のことです。商品券、チケット、切符などが分かりやすい例です。
改正前民法では無記名債権は「動産」である、となっていました。「債権」と「動産」の大きく異なる点は、債権が特定の人にだけ権利を主張できるのに対し、動産は全ての人に対して権利を主張できる点にあります。
例えば債権の例ですと、A氏がB氏におカネを貸して債権者となった場合、A氏はB氏に対してだけ「おカネを返して。」と言えます。これが動産の場合ですと、例えばC氏がボールペンという動産を持っていた場合、「このボールペンは私の物です。」と誰にでも言えます。
このように債権と動産はまったく性質や概念が異なるものなのですが、改正前民法では「無記名債権は動産として扱う」という特例を設定して実社会への対応をしていました。
今回の民法改正では、債権の総則に有価証券の節を新設して有価証券全体についてのルールを詳細に規定するようになりました。そして「無記名債権」については廃止とし、この有価証券の節に新たに「無記名証券」として規定されるようになりました。