先日、妻に連れられて、黒木華さん、樹木希林さん、多部未華子さんが出演されている茶道の映画『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』を、TOHOシネマズ上大岡で鑑賞してきました。
そういえば映画館はかなりご無沙汰なので、私にとっては少し懐かしい感じすらしました。そして妻と違って私は茶道にあまり詳しくはありませんが、そんな私でもとっつきやすく楽しむことができる映画でした。
映画を観る前は、単に茶道が上手くなっていく過程を描いた主人公の成長物語なのかと思っていましたが、いい意味で期待を裏切ってくれました。100分の映画の中では全編、泣いて、笑って、学んで、悩んで、壁にぶつかって、発散して、嫉妬して、落ち込んで、影響を受けて、決意して、感じて、感謝する。いわゆる、ごく普通の人たちのごく普通の世界が描かれていました。それも大半はお茶席以外の場面で。そしてそれがなんとも心地いいのです。なぜでしょうか。不思議ですね。
各出演者の演技も見事です。あまりにも皆一様に自然体なのに驚かされました。とても演技とは思えないくらいです。もともと派手なパフォーマンスを売りにする映画ではないので、微妙なしぐさや表情に高度な表現力が要求されたことと思います。
あと、演出面で心に残った点をいくつか挙げてみます。
まず、当たり前ですが、カメラワークは静かで派手な動きがほとんどありません。広大な自然から茶室のお道具にいたるまで、美しい四季折々の映像が満載で、どのシーンを切り取っても画になります。日本って本当にいい国だと再確認できました。
そして、なにより音がいいです。この『音がいい』というのは、音質の良さの意味ももちろんありますが、それ以上に音を使った演出がうまい、という意味です。例えば主人公の典子が茶席の所作に集中していくシーンがあります。その際の音の表現として、いままで周りであれほどうるさく鳴いていたセミの声が徐々に消えて無音になっていきます。きっと茶席に集中していく典子の耳にはそう聞こえたのでしょう。そしてその無音の時間がしばらく続きます。ここはお気に入りの演出でした。その他にも、風の音、水の音、草木の音、雷雨の音、獅子落としの音、小さな生き物の鳴き声など、すべての音が『日日是好日』の表現に一役買っていました。
久しぶりの映画館での映画鑑賞でしたがいろいろと感じることが多くとても満足でした。TOHOシネマズ上大岡はきれいで居心地の良い空間でしたし、これからはもっと映画館に足を運ぼうと思いました。
なお、映画『日日是好日』の公式サイトには映画のワンシーンを切り取ってお茶の基礎を教えてくれる『お茶講座』というページがあります。
これは解りやすいし楽しいのでお勧めです。きっと、ほっこりできると思いますよ。