[HM006:民法大改正]第九十条(公序良俗)

民法九十条(公序良俗)において記載されていた『目的』という文言が削除されました。

<改正民法>
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

<参考:改正前民法>
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

 

民法90条は民法の大前提ともいえる『公序良俗』に関する条文です。公序良俗違反とは、例えば愛人契約や殺人依頼の契約などがポピュラーです。

過去の判例では、

・愛人契約のような、人倫に反する行為
・殺人依頼のような、正義の観念に反する行為
・悪質商法のような、暴利行為
・芸娼妓(げいしょうぎ)契約のような、個人の自由を極度に制限する行為

などが公序良俗違反にあたるとされています。

さらに公序良俗違反は当事者同士で無効なのはもちろん、善意の第三者も無効を主張できるとしています。例えばAB間の公序良俗違反の売買契約はもちろん無効ですが、転売などで後から関係に入った第三者CもAB間の無効を主張できます。

また過去には、ワイロを受け取って便宜を図った公務員が起訴されたという事例があります。このとき被告は「職務上のルールには則っており正当な行為といえる。公序良俗違反にはあたらない。」と主張したのですが、その訴えは退けられています。その法律行為の結果が贈賄者の利益になる場合には、たとえ直接の目的となる法律行為自体が正当なものであったとしても公序良俗違反にあたると判示されました。

今回の改正であえて『目的』という文言を削除し、こうした「法律行為の直接の『目的』に限定して公序良俗違反の判断をしてはいない」という過去の判例を反映させることになりました。