[SK029:相続]配偶者居住権

このたび40年ぶりに民法が改正され、来年の2020年4月より『配偶者居住権』という相続制度が新たに開始されることになりました。

配偶者居住権は、遺産相続した配偶者の財産を保護する制度のひとつです。詳細は後述しますが、これまでの民法では例えば次のようなケースなどで問題が起こっていました。

例)夫が4000万円の家と2000万円の現預金からなる総額6000万円の財産を遺して死亡。夫には妻と子供が二人。妻は夫の家に同居。子供はふたりとも独立しており別居。遺言書は遺さなかった。

まずこのケースでは遺言書がないので民法で規定する法定相続分で遺産を分割します。法定相続分は妻と子供でそれぞれ半分ずつです。妻3000万円、子供3000万円(1500万円×2人)で相続します。

さて、妻は夫の死後もそのままその家に住み続けたいと思っていました。なのにここで子供達が自分達の法定相続分である3000万円を要求してきました。こうなってしまうと現預金は2000万円しかないので足りません。妻(すなわち子供達の母親)は仕方なく家を売って不足している1000万円を子供達に渡すはめになりました。このように相続によっては、妻は夫を亡くした上に住む家までも失くすという悲惨な事が実際に起こっていました。

そこで新設されたのが『配偶者居住権』です。これはまず相続財産の家を『居住権』と『所有権』の二つに分けます。居住権は住む権利、所有権は持つ権利です。そして例えば配偶者には居住権を、子供達には所有権を与えます。

こうすることで妻は家の所有権こそ失いますが、これまでと変わらず家に住み続けることができます。居住権は妻本人が亡くなるまで存続します。

それに家の所有権はあくまで子供達にあります。つまり子供達にとっても自分の母親に家を売らせて困らせたりすることなく自分たちの相続分を満たすことができます。まさにWin Winですね。

なお、総務省の指針によると、居住権の価格は主に配偶者の年齢を考慮した上で決定されます。年齢が高いほど居住期間が短くなるだろうということで居住権は安くなります。