[SK032:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(改正前の計算方法)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

これは、亡くなった夫(妻)と同居していた配偶者にとって、自宅というものは特別な意味を持っており、他の相続財産よりもより守られるべきである、との観点から法改正がなされたものです。

例として自宅2,000万円と現金2,000万円、計4,000万円の財産を持つ夫が死亡したとします。夫には同居の妻と別居のふたり息子がいた場合、妻が生前贈与や遺言で自宅を譲り受けていたとすると、妻への遺産分割はどうなるでしょうか。

まずは法定相続分の計算です。妻と息子、それぞれが二分の一(2,000万円)ずつです。息子は二人いるので息子一人あたりは四分の一(1,000万円)です。

ここで従来の法律ですと、妻に生前贈与や遺贈で譲った自宅も遺産分割の対象に含んで相続計算をします。このような自宅は共同相続人への遺産の前渡しと考えるためです。

すると妻は法定相続分2,000万円をすでに自宅という形で全額相続していることになります。これでは残った現金2,000万円はすべて息子二人に相続されてしまい、妻に現金が全く渡らなくなってしまいます。夫を失った妻は当面の生活費もなくなり困ってしまうでしょう。自宅を売却しておカネを工面しなくてはならなくなるかもしれません。

このように、これまでの法律では、夫の財産を相続することによって妻がかえって自宅を手放さなくてはならなくなる、ということも起こりえていたわけです。