[HM004:民法大改正]第二十条(制限行為能力者の相手方の催告権)

民法第二十条(制限行為能力者の相手方の催告権)について、条文冒頭の「制限行為能力者」を特定する定義が記載されていたカッコ書き部分が撤廃されました。

 

<改正民法>
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条① 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

<参考:改正前民法>
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条① 制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

 

これは今回の改正で追加された民法十三条一項十号に、制限行為能力者の定義が既に書かれているためです。制限行為能力者の定義自体に変更はありません。

[HM002:民法大改正]第十三条(保佐人の同意を要する行為等)

改正民法では民法第十三条(保佐人の同意を要する行為等)一項に「十号」が新設されました。

 

<改正民法>

(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 ① 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一号~九号省略

十  前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
2項~4項省略

 

<解説>

改正民法第十三条一項十号では、制限行為能力者Aの面倒をみている法定代理人B自身もまた事理弁識能力が著しく不十分な被保佐人だった場合、BはAの代理人として一号~九号の各行為を勝手に行うことはできません。そしてこの場合には法定代理人Bの面倒をみている保佐人Cの同意がいる、ということを明記しました。

なお、関連条文となる第百二条も改正されました。

[HM001:民法大改正]民法大改正

民法は1896年(明治29年)に制定されました。それから120年あまりが経過し、その間に社会・経済環境は大きく変化しました。しかし民法は(途中で細部の修正はあったものの)、この間ずっと明治時代の条文のまま使われ続けてきました。

このような背景の中、時代の変化に対応した民法の大幅改正を望む声が法曹界を中心に常々あがっていました。そしてついに、2017年(平成29年)5月に「民法の一部を改正する法律」が成立しました。この法律による改正民法は2020年4月1日より施工されます。

今回の民法改正は一般的には「民法大改正」とも呼ばれおり、主に債権法を中心に大幅な見直しがなされたものです。債権法には契約等に関する最も基本的なルールが定められています。

併せて、今日の裁判や取引の実務に即したルールを条文に取り入れたり、長くて複雑な条文を複数の項に分割して分かりやすくするなどの改正も行われました。

なお、本ブログのタイトルが[HM]で始まる記事では、今後もこの民法改正の内容を条文ごとに掲載していきます。