[SG004:行政書士試験]詐害行為取消権

今回は民法424条の『詐害行為取消権』についてのお話です。

詐害行為取消権とは、おカネを借りた人(=債務者)が返済の資力があるにも関わらずおカネを返さない、それどころか「どうせおカネを返すくらいなら息子にでも財産を譲って資産を無くしてしまえ」などという詐害意思をもって資産を減少させた場合に、おカネを貸した人(=債権者)が異議を唱え、その行為を取り消して債務者の資産の減少を防ぐことができる権利のことです。

ただし、なんでもかんでも取り消しできるわけでありません。例えば「財産が減るから認めない」という理由を無理やりつけて、債務者の結婚を債権者が取り消しできるとしたら大変です。ですから、詐害行為取消権の対象となる行為は「財産権を目的とする法律行為」に限定されています。もちろん結婚という身分行為には及びません。そして例え財産権を目的とする法律行為であっても、返済資力の確保に支障のない行為であれば、これも詐害行為取消権の対象外です。

さて、ここで問題です。「遺産分割協議」は詐害行為取消権の対象となるでしょうか。例えば自分が借金したあとに親が他界して、親の財産を相続することになったときに「遺産が入ってきてもどうせ借金の返済でみんな持っていかれるから」と考えて、遺産分割協議でわざと自分への相続分をゼロにしてしまえば債権者から逃げ切れるか、という問題です。

答.詐害行為取消権の対象になる
判例は「遺産分割協議もその性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができる」としています。

[SK021:相続]相続税と贈与税のこれから

今年の10月17日に政府税制調査会が開かれ、相続税と贈与税の見直しが検討される運びとなりました。

現状では『贈与税より相続税の方が軽い』ため、高齢の親が若い子育て世代の子や孫に生前贈与で助けたくても、相続税より多くの税金を納めなくてはなりません。そのため生前贈与に二の足を踏んで、結局亡くなるまで財産を抱えてしまう国民が少なからずいるという状態が続いています。

相続税は『基礎控除』呼ばれる非課税枠が定められており、現在の基礎控除は『3千万円+法定相続人の人数×600万円』です。その枠を超えると10%~55%の累進課税が課されます。しかしこのような課税対象となるほどの多くの遺産を残して亡くなるという方は全体の8%しかいません。ほとんどの国民の相続税は非課税枠に収まっています。

他方、生前贈与の基礎控除は『年間110万円』しかありません。累進課税率も上限こそ相続税と同じ55%ですが上昇カーブが急なので、実際に収める税負担はやはり相続税より重くなっています。

少子高齢化が喫緊の課題である我が国では、生前贈与を促進するための対策が急務です。今後数年間の内に贈与税と相続税の制度も変わっていくと思われます。

[GH002:行政書士業務]行政書士街頭無料相談会

昨日は上大岡駅周辺で地元行政書士による街頭無料相談会が行われました。雨模様の天気予報であったにも関わらず、好天に恵まれて本当に良かったです。

おかげさまで開始早々からお客様もひっきりなし。地元の上大岡駅周辺だけでもこんなにたくさんのご相談事があることを実感できました。

今回は遺言、相続、成年後見、土地問題など、様々なお悩みや相談事をその道のプロである行政書士12名が真剣に相談に応じていました。私も微力ながら12名のうちのひとりとして相談窓口に立ち、多くのお客様から様々なご相談をお受けいたしました。

これからも身近な街の法律家として少しでも多く地域のお役に立てればと改めて身の引き締まる思いがしました。

[SK020:相続]相続対策の考え方

相続は一生に何度もあるものではありません。しかし、実際に相続が発生してしまうと多くの関係者に多大な影響を及ぼします。そこで、時間に余裕があるうちにあらかじめご自分の相続対策を検討して、一冊のノートを用意してまとめておきましょう。

では実際に何から考えればよいのでしょうか。

相続対策には大きく2つのポイントがあります。それは、「遺産分割対策」と「納税対策」です。

まず「遺産分割対策」とは、自分の財産の中身を整理してまとめ、何を誰に渡すのかを細かく決めておくことです。遺産争いはお金持ちに限らずどんな家庭にでも起こりえます。相続人がひとりやふたりであればあまり問題はないのかもしれませんが、相続人が増えてくるとそうはいきません。家族や親戚を無用なトラブルに巻き込まないよう、しっかりと準備をしておきましょう。

次に「納税対策」も重要です。相続にかかる税金は一般的に高額です。法律に基づいた節税対策が絶対に必要です。もし不要な税金まで支払ってしまうと、本来家族に遺せるはずだった生活資金が減少してしまうからです。また、相続財産が住宅や土地などの不動産ばかりで現預金がちょっとしかないような場合は危険です。納税資金が不足してしまい、遺された家族が資金繰りに窮してしまいます。ですから財産の総額だけでなくその内訳も大切です。相続した家族が安心して相続税を納められるように、責任を持って納税資金も準備しておいてあげましょう。

[TS007:宅建試験]過去問より

明日は宅建の本試験日です。そこでいくつかの過去問をピックアップしてみました。なお、下記の問題文でお客に該当する人物は全て宅建業者ではないものとします。

 

問1.
Eが転売目的で反復継続して宅地を購入する場合でも、売主が国その他宅地建物取引業法の適用がない者に限られているときは、Eは免許を受ける必要はない。

答1.×
「自ら売買」なので宅建業。売主が国その他宅建業法の適用があるかどうかは関係ない。学習が進むと逆に間違える問題。

 

問2.
Bが、自己所有の宅地に自ら貸主となる賃貸マンションを建設し、借主の募集及び契約をCに、当該マンションの管理業務をDに委託する場合、Cは免許を受ける必要があるが、BとDは免許を受ける必要はない。

答2.〇
Bは「自ら貸借」、Dは「管理業務」なのでいずれも取引に該当せずBとDには免許が不要。Cの借主の募集及び契約とはすなわち「貸借の媒介」を業とすることなので免許が必要。

 

問3.
Aが、Bとの間に専任媒介契約を締結し、当該宅地に関する所定の事項を指定流通機構に登録したときは、Aは、遅滞なく、その旨を記載した書面を作成してBに交付しなければならない。

答3.×
登録を証する書面は「指定流通機構」が作成する。つまり宅建業者は交付するだけなので誤り。

 

問4.
Aが、Bとの間に専任媒介契約を締結し、売買契約を成立させたときは、Aは、遅滞なく、当該宅地の所在、取引価格、売買契約の成立した年月日を指定流通機構に通知しなければならない。

答4.×
当該宅地の所在ではなく、「登録番号」を通知するので誤り。

 

問5.
宅地の売買の媒介において、天災その他不可抗力による損害の負担を定めようとする場合は、その内容を重要事項として説明しなければならない。

答5.×
天災その他不可抗力による損害の負担は37条書面の相対的記載事項であり、重要事項の説明事項ではないので誤り。

 

問6.
宅地の貸借の媒介において、借地借家法第22条で定める定期借地権を設定しようとするときは、その旨を重要事項として説明しなければならない。

答6.〇
重要事項の説明は「⓵宅地の売買・交換」「⓶宅地の貸借」「⓷建物の売買・交換」「⓸建物の貸借」の全てを暗記する。「定期借地権」は「⓶宅地の貸借」のときだけ説明する事項。

 

問7.
宅地建物取引業者C社は、建築確認の済んでいない建築工事完了前の賃貸住宅の貸主Dから当該住宅の貸借の代理を依頼され、代理人として借主Eとの間で当該住宅の賃貸借契約を締結した。この場合、宅建業法に違反する。

答7.×
貸借の代理・媒介は、契約締結時期の制限の対象ではないため、宅建業法に違反しない。

 

問8.
Aは、宅地建物取引業者でない買主Bとの間で建築工事完了前の建物を4,000万円で売却する契約を締結し300万円の手付金を受領する場合、銀行等による連帯保証、保険事業者による保証保険又は指定保管機関による保管により保全措置を講じなければならない。

答8.×
「保全措置」の方法は、「未完成物件」の場合、「⓵銀行」等による連帯保証と「⓶保険事業者」による保証保険、の2種類である。ちなみに「完成物件」なら、⓵+⓶+「⓷指定保管機関」による保管、の3種類となる。

 

問9.
宅地建物取引業者Bが自ら売主となって、宅地建物取引業者でないCと1億円のマンションの売買契約(手付金1,500万円、中間金1,500万円、残代金7,000万円)を建築工事完了前に締結し、その引渡し及び登記の移転を残代金の支払と同時に行う場合、Bは、手付金の受領前及び中間金の受領前それぞれについて、保全措置を講じなければならない。

答9.〇
まず「手付」の額の制限として代金の10分の2を超えてはならない(本問の場合10分の2とは2,000万円)。そして未完成物件については「手付金等」の額が代金額の5%超、または1,000万円超のときに「保全措置」が必要(本問の場合、5%とは750万円)。よって手付金1,500万円と中間金1,500万円を受領する前にそれぞれ保全措置が必要となる。そこで混乱しやすいのが「手付の額の制限」と「手付金等の保全」の関係。うっかりすると、本問では手付金と中間金合わせて3,000万円となるので、手付の制限である10分の2を超えているように見えたりする。しかし手付の額の制限は手付金1,500万円のみが対象であり、中間金は含まない。よって問題はない。「手付」と「手付金等」の使い分けに注意。

[SK019:相続]相続欠格と廃除

相続人の意思で行う相続には、通常の相続である「単純承認」、相続財産を放棄する「相続放棄」、相続する財産を限定して承認する「限定承認」の3種類があります。

逆に相続人の意思が絡まない相続としては、ある事由が発生しただけで相続人が相続権を失う「相続欠格」、被相続人の意思によって相続人の相続権を奪ってしまう「相続人の廃除」の2種類があります。

遺言書を偽造・変造したり、詐欺や強迫によって遺言書を書かせたり、遺産目当てで殺人を犯したりした相続人は「相続欠格」に該当し、当然に相続権を失います。この場合、相続はもちろん、遺贈を受けることもできなくなります。

また、(欠格事由には当てはまらないものの)被相続人が相続人から虐待、侮辱、著しい非行を受けた場合、被相続人はその相続人に自分の財産を一切渡さないようにする「相続人の廃除」を行うことができます。この廃除が成立すれば遺留分ですら渡す必要がなくなります。

ただ実際にこの相続人の廃除という制度を用いるのは結構ハードルが高く、相当ひどい目にあっていたのに家庭裁判所では認めてもらえなかったということもあるようです。また、廃除が確定したとしてもいつでも取り下げが可能です。相続人の廃除はできる限り行うべきではない、という考えが根底にあるのでしょう。

なお、「廃除」という文字を「排除」と書き間違える方がいらっしゃいます。行政書士試験の記述式問題では特に注意するようにしましょう。

[KQ012:建設業許可]誠実性

数多くある業種の中でもとりわけ建設業は、お客様や関係者の一生をも左右しかねない重大な仕事を担うことが多い業種です。

 

<建設業によくみられる特徴>

◆契約単価が高い
マイホームの建築やダムの建設など、個人にとっても企業や行政にとっても非常に高額な契約を行なうことが多い業種です。もし不正を働くような不誠実な者を業者として許可してしまうと、その被害は大変な額にのぼってしまいます。

◆とにかく安全が第一である
建設業は人々の安全に直接関わる仕事が多い業種です。文書を改ざんして安全基準を満たしているかのように虚偽の申告をしたり、見えない部分で手抜き工事をするような不誠実な者を業者として許可してしまうと、多くの人々をケガや死亡事故に巻き込みかねません。

 

そこで国や行政庁が建設業許可を与えるにあたっては、慎重に厳重な審査を行って、このような不誠実な者にお墨付きを与えることのないようにしなければなりません。このことは下記のように建設業法でも定義されています。

◆建設業法7条三
法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。

よく見るとこの条文には対象者のことも書かれています。簡単に言えば「法人の場合はその法人と役員そして営業所の所長だけである。」「個人の場合は本人と支配人だけである。」という定義となります。さらに言い換えると、「対象者はひとりで契約を結ぶことができる立場の人である」ということです。

なお、一般の従業員についてはそこまでは求められていないということになるので、許可申請をする際には留意するといいでしょう。

[GH001:行政書士業務]上大岡駅前の無料法律相談会

みなさんは「行政書士」と聞くとどのようなイメージを持たれるでしょうか。ひょっとしたらあまりご存じない方もいらっしゃるかと思います。

なぜこのようなことをお聞きしたかというと、今月は県内各地で神奈川県行政書士会による「行政書士フェスタ」が開催されています。これは何かというと、みなさんに行政書士の事をもっと身近に感じていただけるよう開催される「無料の法律相談会」のことです。

そしてその一環として、きたる10月27日(土)には、京急上大岡駅前において南区、港南区の地元の行政書士による無料の法律相談会が開催されます。もちろんどなたでも相談会に参加いただけます。

 

私たち行政書士がお力になれる法律相談は

◆相続・遺言
◆クーリングオフ
◆契約書や内容証明書などの書類作成
◆外国人の在留・永住・帰化申請
◆会社設立・営業許可申請

等、たくさんございます。

弁護士の先生に相談するにはちょっと敷居が高すぎる、というような身近な法律相談でも気軽にしていただけるのが「街の法律家」である行政書士の強みです。

今回のようにさまざまなタイプの行政書士が一堂に集まっている中で無料相談できる機会はそうそうないと思います。もしお困りごとや興味のあることがございましたら、ぜひ足を運んでいただけたらと思います。

 

<「行政書士フェスタ2018(南・港南支部)」開催要項>

日時:平成30年10月27日(土)11:00~16:30
場所:京急上大岡駅前の鎌倉街道側コンコースにて(タカノフルーツパーラーさんの前)
開催内容:地元の行政書士による法律相談会
参加資格:どなたでも参加いただけます
相談料:無料

[SG003:行政書士試験]譲渡担保の特徴

「担保物権」とは、貸したおカネを返済してもらえなかった時に、担保になっている物を債権者が処分しておカネに換えてしまえる権利の事です。民法の担保物権には「法定担保物権」と「約定担保物権」があります。

法定担保物権とは法律に規定されている条件が整うと当然に発生する担保物権です。民法では「留置権」「先取特権」が規定されています。

約定担保物権とは当事者間の意思表示により発生する担保物権です。民法では「質権」「抵当権」が規定されています。

しかし、これら民法に規定されている担保物権だけでは実社会では対応しきれませんでした。そこで実社会の取引の中で自然と生まれ判例により認められた担保物権も現れるようになりました。このような物権を「非典型担保」と言います。

そんな非典型担保のひとつに「譲渡担保」があります。譲渡担保とは、おカネを貸した際に担保になっている物の使用収益権を債務者に残したままとする担保物権の事です。

例えば、自社の工場にある工作機械を担保にして銀行から運転資金を借りてくる場合などに利用されます。譲渡担保は質権と違い、担保になっている工作機械をそのまま工場に置いたまま業務にも使用できます(占有改定といいます)。そして万一、資金繰りが悪化したら、銀行は担保になっている工作機械を売却して回収することができるのです。

譲渡担保は「抵当権の動産(=不動産以外の物)版」と言えるかもしれませんね。

[ZD002:雑記]お茶席でのひととき

昨日、横浜のデパートでお茶席が設けられていたので参加してきました。

お茶席は表千家である神奈川長生会の先生方によって楽しい雰囲気の中で行われました。大変人気のある催し物なので今回も長蛇の列でした。それでもなんとか40分ほど並んで参加することができました。

↓今回も多くのお客様で賑わっています。

 

参加者は16名ずつの入れ替え制です。入れ替えの合間に毎回、先生が床の間の芙蓉を丁寧に生け直していました。時折、両手をこすり合わせて温めた手のひらで芙蓉の花を包み込んでいました。そのしぐさが美しかったです。

↓先生が慈しみながら芙蓉の花を生けています。

 

今回は、この芙蓉についてお茶席の講話でお話されていたことを、一つご紹介します。

芙蓉はその日の一番のお茶席で宗匠がお客様をもてなすときに生けることが多い重要な花なのだそうです。その時の芙蓉は、お弟子さん達が朝のうちに何本も切って水を張った桶に切り口を浸して用意しておきます。しかし、生け花にすると長持ちしない弱い花なので、たくさん用意してきてもお茶席の時間まで元気でいてくれるものはなかなかありません。かといってお茶席の直前に切ってきてもお茶席の間に徐々にしおれてしまいます。

それなのに、あるお弟子さんが用意してくる芙蓉だけは、いつもお茶席の時間中、なぜかずっと元気でした。不思議に思った講話の先生はその秘訣をこっそりとそのお弟子さんに教わったそうです。

「芙蓉は季節に関わらずその日の朝5:30きっかりに取りに行きます。その際に気を付けているのは、よく咲いている花は決して選ばないこと。花が膨らむ直前のつぼみが一番いいですね。そして切り取った花をすぐに花瓶に差します。すると花瓶の中でさらに成長を続けるので、お茶席の時間あたりでちょうど花が咲くというわけです。」「完成した花を切り取って持ってくるのではなく、ちょうどお茶席のときに自分の力で花を咲かしてもらうイメージです。」

こんな感じで興味深い講話にうなづきながら、濃いめのお抹茶と上品な甘さの主菓子(おもがし)をいただきました。有意義なひとときでした。

↓主菓子。中はこしあんです。お抹茶によく合います。

 

↓立礼(りゅうれい)でお抹茶をたてていただきました。

 

↓宗匠が90歳の時に、茶会で90個の茶器を用意したとの逸話も。