[SG002:行政書士試験]代物弁済

事例問題です。

BさんはAさんへ2万円を貸しました。それからふた月ほど経ちましたがBさんはAさんからおカネを返してもらっていません。心配になったBさんがAさんの家に行き「早くおカネを返してほしい。」と訴えると、Aさんは箱から腕時計を取り出して「代わりにこの腕時計をあげる。これで借金を帳消しにして。」と言いました。カッコいい腕時計だったのでBさんは了承して腕時計を持ち帰りました。

その2日後、BさんはAさんから連絡を受けました。Aさんは「昨日、ネットオークションをしていて気付いたんだけど、先日君に渡した腕時計には結構なプレミアが付いていて、今だと6万円で取引されている。だから実際の時計の価値6万円と借金2万円との差額である4万円を支払って欲しい。」

さて、Bさんはこの4万円をAさんに支払わねばならないのでしょうか。

 

答え:支払う必要はない

一般的に、借りたおカネをおカネ以外のもので弁済することを「代物弁済」といいます。代物弁済では両者の合意さえあればおカネの代わりに提供するモノ自体の価値は問われません。代物弁済をすると債務は消滅します。

今回のケースでは、たとえ後から知った腕時計の価値が6万円に跳ね上がっていようが、3円に暴落していようが、代物弁済により既に債務は消滅していることになります。よって腕時計の現在の価値と借金との間にいくら差額があったとしても、それをBさんがAさんに支払う必要はありません。

[HM005:民法大改正]第八十六条(不動産及び動産)

民法第八十六条(不動産及び動産)において、3項にあった「無記名債権」が削除されました。

 

<改正民法>
第八十六条① 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。

<参考:改正前民法>
第八十六条① 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
3 無記名債権は、動産とみなす。

 

「無記名債権」はその名の通り債権者名の書かれていない証券的債権のことです。商品券、チケット、切符などが分かりやすい例です。

改正前民法では無記名債権は「動産」である、となっていました。「債権」と「動産」の大きく異なる点は、債権が特定の人にだけ権利を主張できるのに対し、動産は全ての人に対して権利を主張できる点にあります。

例えば債権の例ですと、A氏がB氏におカネを貸して債権者となった場合、A氏はB氏に対してだけ「おカネを返して。」と言えます。これが動産の場合ですと、例えばC氏がボールペンという動産を持っていた場合、「このボールペンは私の物です。」と誰にでも言えます。

このように債権と動産はまったく性質や概念が異なるものなのですが、改正前民法では「無記名債権は動産として扱う」という特例を設定して実社会への対応をしていました。

今回の民法改正では、債権の総則に有価証券の節を新設して有価証券全体についてのルールを詳細に規定するようになりました。そして「無記名債権」については廃止とし、この有価証券の節に新たに「無記名証券」として規定されるようになりました。

[HM004:民法大改正]第二十条(制限行為能力者の相手方の催告権)

民法第二十条(制限行為能力者の相手方の催告権)について、条文冒頭の「制限行為能力者」を特定する定義が記載されていたカッコ書き部分が撤廃されました。

 

<改正民法>
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条① 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

<参考:改正前民法>
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条① 制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

 

これは今回の改正で追加された民法十三条一項十号に、制限行為能力者の定義が既に書かれているためです。制限行為能力者の定義自体に変更はありません。

[ZR005:雑記]皇居一般参観の申込

「皇居一般参観」をご存知でしょうか。これは宮内庁が年間を通じて一般向けに実施している皇居内のガイドツアーのことです。

宮内庁の皇居一般参観のホームページ

料金は無料です。日曜、月曜、祝日、その他特定の日を除くほぼ毎日、原則午前10時と午後1時30分の2回に分けて行われます。一回1時間15分のツアーです。ペットの同伴はできません。

皇居一般参観はご年配の方に限らず若い人や外国人観光客にも人気のあるツアーとして有名で、最近では平成28年6月に各回の参観人数をこれまでの300人定員から500人定員に増やしたほどです。

事前予約なしでの当日参加も可能ですが、このように人気の高いツアーなので、できれば事前予約をおすすめします。

事前予約には、
インターネットによるオンライン申込み
②郵送受付
③当日現地受付
があります。

そこで、①オンライン申込みをしてみました。私は今回、11月の参観を希望しています。しかしオンライン申込みでは当月と来月の2か月分しか登録できないようです。私はそのことを9月頃に知ったのですが、その時はまだ11月のカレンダーが表示されなかったので予約することができませんでした。そこで月が替わる10月1日を待っていました。

そして10月1日の午前9時に再度インターネットにつないでオンライン申込みの画面を開きました。すると確かに9月30日時点では存在しなかった11月のカレンダーが表示されたのですが、なんと、ほとんど全ての日が、既に定員に達しているという意味の「×」で埋め尽くされていました。11月のカレンダーが公開されてからそんなに時間は経っていないはずなのに。

↓もう「×」しかありません!

こうなると②郵送受付か③当日現地受付に賭けてみるしかないのでしょうか。しかしオンライン申込みの埋まり方を見る限り、郵送受付も期待薄に感じます。かといって今回は地方から集まってもらう友人達と一緒に参観するので、当日の現地受付にしてしまって実際に行ったら定員オーバーでした、では困ります。

そこで最後の手段、翌日朝8時45分から電話をかけることにしました。しかし、今度は何度かけても話し中で繋がりません。うーん、やはり諦めるしかないのかな。。

こうなったら、あとは根気と運です。15分くらい時間を空けてリダイヤル、リダイヤル、リダイヤル。すると11時30頃、受話器から聞こえてきた音が「ツー、ツー」ではなく、はじめて「プルルル」に!ここでようやく宮内庁の担当の方とお話ができました。

電話口の担当の方は大変やさしい方で丁寧に対応してくださいました。こちらから希望日と参加人数をお伝えすると、当日の空き状況を確認して仮予約までしていただけました。ただしあくまで仮予約なので、あとは郵送受付と同じ手順をして下さいとのことでした。

ほぼあきらめていたので、仮予約ができて大変ほっとしました。すぐに書類を揃えて郵送しました。

結論:④電話 が最も良い

もし私のように、オンライン申込みの画面の「×」を見て諦めかけてしまった方がいらっしゃいましたら、ぜひこの記事を参考に再度挑戦してみてください。

[HM003:民法大改正]第百二条(代理人の行為能力)

改正民法では民法第百二条(代理人の行為能力)が、これまでより具体的な内容で表現されるようになりました。

<改正民法>
(代理人の行為能力)
第百二条 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

<参考:改正前民法>
(代理人の行為能力)
第百二条 代理人は、行為能力者であることを要しない。

<解説>
改正前民法では、代理人は必ずしも行為能力者である必要はない、とされてきました。つまり、たとえ代理人自身が制限行為能力者であったとしても、それを理由にした行為の取り消しはできないというものでした。

確かにこの考え方でも、任意代理の場合はまず問題ありません。本人が自分でも分かっているうえで、わざわざ制限行為能力者を代理人に選任しているからです。

しかし現実には、本人も代理人も両方とも制限行為能力者である場合があります。たとえば軽い認知症にかかっている親が未成年の息子の代理人になった場合などです。

この場合の親は法定代理人です。息子は自分で親を代理人に選任したわけではありません。それなのに認知症の親が息子の代理で何か誤った行為をしてしまったとしても、改正前の民法では取り消しできるという明文がなかったのです。

改正民法では、制限行為能力者である本人(たとえば未成年の息子)を、これまた制限行為能力者である法定代理人(たとえば認知症の親)が代理行為する場合には、行為能力の制限(たとえば認知症による保佐人としての制限)により取消権を行使することができるようになりました。

第十三条の改正と合わせ、今回の改正民法では制限行為能力者に対する保護がいっそう強化されました。

[HM002:民法大改正]第十三条(保佐人の同意を要する行為等)

改正民法では民法第十三条(保佐人の同意を要する行為等)一項に「十号」が新設されました。

 

<改正民法>

(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 ① 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一号~九号省略

十  前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
2項~4項省略

 

<解説>

改正民法第十三条一項十号では、制限行為能力者Aの面倒をみている法定代理人B自身もまた事理弁識能力が著しく不十分な被保佐人だった場合、BはAの代理人として一号~九号の各行為を勝手に行うことはできません。そしてこの場合には法定代理人Bの面倒をみている保佐人Cの同意がいる、ということを明記しました。

なお、関連条文となる第百二条も改正されました。