民法第98条の2は『意思表示の受領能力』に関する条文です。改正後は『意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき』が追加されました。
<改正後:第98条の2>
(意思表示の受領能力)
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を
有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であっ
たときは、その意思表示をもってその相手方に対抗すること
ができない。ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った
後は、この限りでない。
一 相手方の法定代理人
二 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方
<参考><改正前:第98条の2>
(意思表示の受領能力)
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者
又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもって
その相手方に対抗することができない。ただし、その法定
代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。
例えばコンビニの店長Aさんが未成年者の学生B君を直接契約でアルバイトとして雇ってしまった場合の事を考えてみます。未成年者を相手方とした意思表示の場合、この意思表示をもって未成年者に対抗することはできません。そのため数日後AさんがいきなりB君から「やっぱり性に合わないので辞めます」と言われてしまっても、原則としてAさんは引き止める(対抗する)ことはできません。逆にB君がAさんから不当に解雇されそうになった場合には、B君は取り交わした契約内容を盾にAさんに対抗することができます。
このように意思表示の相手方が未成年者や成年被後見人の場合ですと意思表示をした側が一方的にリスクを負うことが往々にしてあるため、未成年者や成年被後見人の代りに親権者や後見人などの法定代理人を相手方として契約を結ぶことが一般的です。