[SK019:相続]相続欠格と廃除

相続人の意思で行う相続には、通常の相続である「単純承認」、相続財産を放棄する「相続放棄」、相続する財産を限定して承認する「限定承認」の3種類があります。

逆に相続人の意思が絡まない相続としては、ある事由が発生しただけで相続人が相続権を失う「相続欠格」、被相続人の意思によって相続人の相続権を奪ってしまう「相続人の廃除」の2種類があります。

遺言書を偽造・変造したり、詐欺や強迫によって遺言書を書かせたり、遺産目当てで殺人を犯したりした相続人は「相続欠格」に該当し、当然に相続権を失います。この場合、相続はもちろん、遺贈を受けることもできなくなります。

また、(欠格事由には当てはまらないものの)被相続人が相続人から虐待、侮辱、著しい非行を受けた場合、被相続人はその相続人に自分の財産を一切渡さないようにする「相続人の廃除」を行うことができます。この廃除が成立すれば遺留分ですら渡す必要がなくなります。

ただ実際にこの相続人の廃除という制度を用いるのは結構ハードルが高く、相当ひどい目にあっていたのに家庭裁判所では認めてもらえなかったということもあるようです。また、廃除が確定したとしてもいつでも取り下げが可能です。相続人の廃除はできる限り行うべきではない、という考えが根底にあるのでしょう。

なお、「廃除」という文字を「排除」と書き間違える方がいらっしゃいます。行政書士試験の記述式問題では特に注意するようにしましょう。

[KQ012:建設業許可]誠実性

数多くある業種の中でもとりわけ建設業は、お客様や関係者の一生をも左右しかねない重大な仕事を担うことが多い業種です。

 

<建設業によくみられる特徴>

◆契約単価が高い
マイホームの建築やダムの建設など、個人にとっても企業や行政にとっても非常に高額な契約を行なうことが多い業種です。もし不正を働くような不誠実な者を業者として許可してしまうと、その被害は大変な額にのぼってしまいます。

◆とにかく安全が第一である
建設業は人々の安全に直接関わる仕事が多い業種です。文書を改ざんして安全基準を満たしているかのように虚偽の申告をしたり、見えない部分で手抜き工事をするような不誠実な者を業者として許可してしまうと、多くの人々をケガや死亡事故に巻き込みかねません。

 

そこで国や行政庁が建設業許可を与えるにあたっては、慎重に厳重な審査を行って、このような不誠実な者にお墨付きを与えることのないようにしなければなりません。このことは下記のように建設業法でも定義されています。

◆建設業法7条三
法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。

よく見るとこの条文には対象者のことも書かれています。簡単に言えば「法人の場合はその法人と役員そして営業所の所長だけである。」「個人の場合は本人と支配人だけである。」という定義となります。さらに言い換えると、「対象者はひとりで契約を結ぶことができる立場の人である」ということです。

なお、一般の従業員についてはそこまでは求められていないということになるので、許可申請をする際には留意するといいでしょう。

[GH001:行政書士業務]上大岡駅前の無料法律相談会

みなさんは「行政書士」と聞くとどのようなイメージを持たれるでしょうか。ひょっとしたらあまりご存じない方もいらっしゃるかと思います。

なぜこのようなことをお聞きしたかというと、今月は県内各地で神奈川県行政書士会による「行政書士フェスタ」が開催されています。これは何かというと、みなさんに行政書士の事をもっと身近に感じていただけるよう開催される「無料の法律相談会」のことです。

そしてその一環として、きたる10月27日(土)には、京急上大岡駅前において南区、港南区の地元の行政書士による無料の法律相談会が開催されます。もちろんどなたでも相談会に参加いただけます。

 

私たち行政書士がお力になれる法律相談は

◆相続・遺言
◆クーリングオフ
◆契約書や内容証明書などの書類作成
◆外国人の在留・永住・帰化申請
◆会社設立・営業許可申請

等、たくさんございます。

弁護士の先生に相談するにはちょっと敷居が高すぎる、というような身近な法律相談でも気軽にしていただけるのが「街の法律家」である行政書士の強みです。

今回のようにさまざまなタイプの行政書士が一堂に集まっている中で無料相談できる機会はそうそうないと思います。もしお困りごとや興味のあることがございましたら、ぜひ足を運んでいただけたらと思います。

 

<「行政書士フェスタ2018(南・港南支部)」開催要項>

日時:平成30年10月27日(土)11:00~16:30
場所:京急上大岡駅前の鎌倉街道側コンコースにて(タカノフルーツパーラーさんの前)
開催内容:地元の行政書士による法律相談会
参加資格:どなたでも参加いただけます
相談料:無料

[SG003:行政書士試験]譲渡担保の特徴

「担保物権」とは、貸したおカネを返済してもらえなかった時に、担保になっている物を債権者が処分しておカネに換えてしまえる権利の事です。民法の担保物権には「法定担保物権」と「約定担保物権」があります。

法定担保物権とは法律に規定されている条件が整うと当然に発生する担保物権です。民法では「留置権」「先取特権」が規定されています。

約定担保物権とは当事者間の意思表示により発生する担保物権です。民法では「質権」「抵当権」が規定されています。

しかし、これら民法に規定されている担保物権だけでは実社会では対応しきれませんでした。そこで実社会の取引の中で自然と生まれ判例により認められた担保物権も現れるようになりました。このような物権を「非典型担保」と言います。

そんな非典型担保のひとつに「譲渡担保」があります。譲渡担保とは、おカネを貸した際に担保になっている物の使用収益権を債務者に残したままとする担保物権の事です。

例えば、自社の工場にある工作機械を担保にして銀行から運転資金を借りてくる場合などに利用されます。譲渡担保は質権と違い、担保になっている工作機械をそのまま工場に置いたまま業務にも使用できます(占有改定といいます)。そして万一、資金繰りが悪化したら、銀行は担保になっている工作機械を売却して回収することができるのです。

譲渡担保は「抵当権の動産(=不動産以外の物)版」と言えるかもしれませんね。

[ZD002:雑記]お茶席でのひととき

昨日、横浜のデパートでお茶席が設けられていたので参加してきました。

お茶席は表千家である神奈川長生会の先生方によって楽しい雰囲気の中で行われました。大変人気のある催し物なので今回も長蛇の列でした。それでもなんとか40分ほど並んで参加することができました。

↓今回も多くのお客様で賑わっています。

 

参加者は16名ずつの入れ替え制です。入れ替えの合間に毎回、先生が床の間の芙蓉を丁寧に生け直していました。時折、両手をこすり合わせて温めた手のひらで芙蓉の花を包み込んでいました。そのしぐさが美しかったです。

↓先生が慈しみながら芙蓉の花を生けています。

 

今回は、この芙蓉についてお茶席の講話でお話されていたことを、一つご紹介します。

芙蓉はその日の一番のお茶席で宗匠がお客様をもてなすときに生けることが多い重要な花なのだそうです。その時の芙蓉は、お弟子さん達が朝のうちに何本も切って水を張った桶に切り口を浸して用意しておきます。しかし、生け花にすると長持ちしない弱い花なので、たくさん用意してきてもお茶席の時間まで元気でいてくれるものはなかなかありません。かといってお茶席の直前に切ってきてもお茶席の間に徐々にしおれてしまいます。

それなのに、あるお弟子さんが用意してくる芙蓉だけは、いつもお茶席の時間中、なぜかずっと元気でした。不思議に思った講話の先生はその秘訣をこっそりとそのお弟子さんに教わったそうです。

「芙蓉は季節に関わらずその日の朝5:30きっかりに取りに行きます。その際に気を付けているのは、よく咲いている花は決して選ばないこと。花が膨らむ直前のつぼみが一番いいですね。そして切り取った花をすぐに花瓶に差します。すると花瓶の中でさらに成長を続けるので、お茶席の時間あたりでちょうど花が咲くというわけです。」「完成した花を切り取って持ってくるのではなく、ちょうどお茶席のときに自分の力で花を咲かしてもらうイメージです。」

こんな感じで興味深い講話にうなづきながら、濃いめのお抹茶と上品な甘さの主菓子(おもがし)をいただきました。有意義なひとときでした。

↓主菓子。中はこしあんです。お抹茶によく合います。

 

↓立礼(りゅうれい)でお抹茶をたてていただきました。

 

↓宗匠が90歳の時に、茶会で90個の茶器を用意したとの逸話も。

[SG002:行政書士試験]代物弁済

事例問題です。

BさんはAさんへ2万円を貸しました。それからふた月ほど経ちましたがBさんはAさんからおカネを返してもらっていません。心配になったBさんがAさんの家に行き「早くおカネを返してほしい。」と訴えると、Aさんは箱から腕時計を取り出して「代わりにこの腕時計をあげる。これで借金を帳消しにして。」と言いました。カッコいい腕時計だったのでBさんは了承して腕時計を持ち帰りました。

その2日後、BさんはAさんから連絡を受けました。Aさんは「昨日、ネットオークションをしていて気付いたんだけど、先日君に渡した腕時計には結構なプレミアが付いていて、今だと6万円で取引されている。だから実際の時計の価値6万円と借金2万円との差額である4万円を支払って欲しい。」

さて、Bさんはこの4万円をAさんに支払わねばならないのでしょうか。

 

答え:支払う必要はない

一般的に、借りたおカネをおカネ以外のもので弁済することを「代物弁済」といいます。代物弁済では両者の合意さえあればおカネの代わりに提供するモノ自体の価値は問われません。代物弁済をすると債務は消滅します。

今回のケースでは、たとえ後から知った腕時計の価値が6万円に跳ね上がっていようが、3円に暴落していようが、代物弁済により既に債務は消滅していることになります。よって腕時計の現在の価値と借金との間にいくら差額があったとしても、それをBさんがAさんに支払う必要はありません。

[HM005:民法大改正]第八十六条(不動産及び動産)

民法第八十六条(不動産及び動産)において、3項にあった「無記名債権」が削除されました。

 

<改正民法>
第八十六条① 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。

<参考:改正前民法>
第八十六条① 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
3 無記名債権は、動産とみなす。

 

「無記名債権」はその名の通り債権者名の書かれていない証券的債権のことです。商品券、チケット、切符などが分かりやすい例です。

改正前民法では無記名債権は「動産」である、となっていました。「債権」と「動産」の大きく異なる点は、債権が特定の人にだけ権利を主張できるのに対し、動産は全ての人に対して権利を主張できる点にあります。

例えば債権の例ですと、A氏がB氏におカネを貸して債権者となった場合、A氏はB氏に対してだけ「おカネを返して。」と言えます。これが動産の場合ですと、例えばC氏がボールペンという動産を持っていた場合、「このボールペンは私の物です。」と誰にでも言えます。

このように債権と動産はまったく性質や概念が異なるものなのですが、改正前民法では「無記名債権は動産として扱う」という特例を設定して実社会への対応をしていました。

今回の民法改正では、債権の総則に有価証券の節を新設して有価証券全体についてのルールを詳細に規定するようになりました。そして「無記名債権」については廃止とし、この有価証券の節に新たに「無記名証券」として規定されるようになりました。

[HM004:民法大改正]第二十条(制限行為能力者の相手方の催告権)

民法第二十条(制限行為能力者の相手方の催告権)について、条文冒頭の「制限行為能力者」を特定する定義が記載されていたカッコ書き部分が撤廃されました。

 

<改正民法>
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条① 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

<参考:改正前民法>
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条① 制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

 

これは今回の改正で追加された民法十三条一項十号に、制限行為能力者の定義が既に書かれているためです。制限行為能力者の定義自体に変更はありません。

[ZR005:雑記]皇居一般参観の申込

「皇居一般参観」をご存知でしょうか。これは宮内庁が年間を通じて一般向けに実施している皇居内のガイドツアーのことです。

宮内庁の皇居一般参観のホームページ

料金は無料です。日曜、月曜、祝日、その他特定の日を除くほぼ毎日、原則午前10時と午後1時30分の2回に分けて行われます。一回1時間15分のツアーです。ペットの同伴はできません。

皇居一般参観はご年配の方に限らず若い人や外国人観光客にも人気のあるツアーとして有名で、最近では平成28年6月に各回の参観人数をこれまでの300人定員から500人定員に増やしたほどです。

事前予約なしでの当日参加も可能ですが、このように人気の高いツアーなので、できれば事前予約をおすすめします。

事前予約には、
インターネットによるオンライン申込み
②郵送受付
③当日現地受付
があります。

そこで、①オンライン申込みをしてみました。私は今回、11月の参観を希望しています。しかしオンライン申込みでは当月と来月の2か月分しか登録できないようです。私はそのことを9月頃に知ったのですが、その時はまだ11月のカレンダーが表示されなかったので予約することができませんでした。そこで月が替わる10月1日を待っていました。

そして10月1日の午前9時に再度インターネットにつないでオンライン申込みの画面を開きました。すると確かに9月30日時点では存在しなかった11月のカレンダーが表示されたのですが、なんと、ほとんど全ての日が、既に定員に達しているという意味の「×」で埋め尽くされていました。11月のカレンダーが公開されてからそんなに時間は経っていないはずなのに。

↓もう「×」しかありません!

こうなると②郵送受付か③当日現地受付に賭けてみるしかないのでしょうか。しかしオンライン申込みの埋まり方を見る限り、郵送受付も期待薄に感じます。かといって今回は地方から集まってもらう友人達と一緒に参観するので、当日の現地受付にしてしまって実際に行ったら定員オーバーでした、では困ります。

そこで最後の手段、翌日朝8時45分から電話をかけることにしました。しかし、今度は何度かけても話し中で繋がりません。うーん、やはり諦めるしかないのかな。。

こうなったら、あとは根気と運です。15分くらい時間を空けてリダイヤル、リダイヤル、リダイヤル。すると11時30頃、受話器から聞こえてきた音が「ツー、ツー」ではなく、はじめて「プルルル」に!ここでようやく宮内庁の担当の方とお話ができました。

電話口の担当の方は大変やさしい方で丁寧に対応してくださいました。こちらから希望日と参加人数をお伝えすると、当日の空き状況を確認して仮予約までしていただけました。ただしあくまで仮予約なので、あとは郵送受付と同じ手順をして下さいとのことでした。

ほぼあきらめていたので、仮予約ができて大変ほっとしました。すぐに書類を揃えて郵送しました。

結論:④電話 が最も良い

もし私のように、オンライン申込みの画面の「×」を見て諦めかけてしまった方がいらっしゃいましたら、ぜひこの記事を参考に再度挑戦してみてください。

[HM003:民法大改正]第百二条(代理人の行為能力)

改正民法では民法第百二条(代理人の行為能力)が、これまでより具体的な内容で表現されるようになりました。

<改正民法>
(代理人の行為能力)
第百二条 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

<参考:改正前民法>
(代理人の行為能力)
第百二条 代理人は、行為能力者であることを要しない。

<解説>
改正前民法では、代理人は必ずしも行為能力者である必要はない、とされてきました。つまり、たとえ代理人自身が制限行為能力者であったとしても、それを理由にした行為の取り消しはできないというものでした。

確かにこの考え方でも、任意代理の場合はまず問題ありません。本人が自分でも分かっているうえで、わざわざ制限行為能力者を代理人に選任しているからです。

しかし現実には、本人も代理人も両方とも制限行為能力者である場合があります。たとえば軽い認知症にかかっている親が未成年の息子の代理人になった場合などです。

この場合の親は法定代理人です。息子は自分で親を代理人に選任したわけではありません。それなのに認知症の親が息子の代理で何か誤った行為をしてしまったとしても、改正前の民法では取り消しできるという明文がなかったのです。

改正民法では、制限行為能力者である本人(たとえば未成年の息子)を、これまた制限行為能力者である法定代理人(たとえば認知症の親)が代理行為する場合には、行為能力の制限(たとえば認知症による保佐人としての制限)により取消権を行使することができるようになりました。

第十三条の改正と合わせ、今回の改正民法では制限行為能力者に対する保護がいっそう強化されました。