[SK014:相続]特別受益の持戻しの免除

例えば親が自分の息子のうちのひとりに独立開業資金を援助して応援したとします。この後もし親が亡くなった場合には、この開業資金は「生前贈与」として扱われます。

生前贈与には「持戻し(もちもどし)」という制度があります。これは遺産分割の計算時に、計算のベースとなる故人の財産に生前贈与を足す(戻す)ことを意味します。

しかし、親としては独立開業資金を提供するのは、その息子への特別な思いから応援するためであり、全体の相続とは切り離して欲しいと考えたとしましょう。さて、それを実現する方法はあるのでしょうか。

答えは「あります」。やり方は簡単。「生前贈与した息子の独立開業資金は遺産分割の対象となる相続財産とは無関係にすること」を「遺言」に意思として残せばいいのです。これを「特別受益の持戻しの免除」と言います。

[SK012:相続]特別受益がある場合の相続計算

特別受益を受けた人は故人の財産の一部を既にもらっていることになります。ですからその特別受益分だけその人の相続分が少なくなるように相続計算をします。

 

★特別受益がある場合の各人の相続計算式

(「相続開始時の故人の財産」+相続人全員の「生前贈与」)×法定相続割合-自分の「特別受益」

 

さて、上記の計算式には「遺贈」が書かれていませんが、これはどういうことなのかわかりますか。

そうです。遺贈は「相続開始時の故人の財産」に含まれているから書かれていないのです。ここが生前贈与と遺贈の扱いの違いです。

生前贈与は持戻し(もちもどし)として最初に足しますが、遺贈は最初に足しません。なお、式の最後で引いている「特別受益」にはもちろん「生前贈与」も「遺贈」も該当します。

 

★計算のポイント

・「生前贈与」は、最初に足して、最後で引く

・「遺贈」は、最初になにもせず、最後で引く

 

特別受益がある場合の相続計算は、過去の行政書士試験でも出題されたことがあります。受験される方は上記のポイントをチェックしておきましょう。

[SK011:相続]生前贈与と特別受益

生前贈与とは、言ってみれば「遺産の前渡し」です。ですからこれを無視して単純に法定相続の割合に応じて遺産分けを行ってしまうと、結果として不公平な相続となってしまいます。

そこで生前贈与は「遺贈」と同じく、「遺産分割前に故人から特別にもらった財産」すなわち「特別受益」として扱うこととし、相続計算時にそれを考慮します。

 

★特別受益にあたるもの

・生前贈与

・遺贈

[SK010:相続]生前贈与

相続は法定相続の割合に応じて行われるのが原則です。しかし現実として、親は自分が亡くなる前に、息子のうちのひとりにだけ住宅購入資金の一部を援助したり、娘のうちのひとりにだけ結婚する際の持参金を渡すようなケースが往々にしてあります。これらのケースを「生前贈与」と呼びます。

生前贈与は「婚姻や養子縁組のためもしくは生計の資本としての贈与」を指します。例えば生前贈与にあたる行為とあたらない行為は以下の通りです。

★生前贈与にあたるもの

マイホーム購入資金、開業資金、農家での農地、結婚の持参金

 

★生前贈与にあたらないもの

日々の生活費、学費、遊興費(競馬・パチンコ代)

 

上記で生前贈与にあたるとされているケースでも金額があまり高額でなかった時には、特別受益にあたらないと判断されることがあります。また、その逆のケースもあります。結局、実務上では金額が高額であるかどうかが最初のチェックポイントになっている場合があるというわけです。

[SK009:相続]遺留分減殺請求と民法964条

ある人の遺留分が侵害されている内容の遺言書で遺贈があった場合でも、遺言書の通りに財産は振り分けられます。自分の遺留分を侵害された人は、遺留分の侵害を知った時から一年以内に「取り戻す」ことを請求(「遺留分減殺請求」という)することで、遺留分を取り戻すことができます。

さて先日、「遺留分を侵害している遺言書はそもそも民法964条により無効なのではないのか」とのご質問を受けることがありました。これは遺贈を定めた同条条文の但し書きにある「~ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。」の記述の解釈に関するご質問でした。

実はこの但し書きがまさに「遺留分減殺請求」を認めている部分となります。なので遺言書自体の有効無効を示したものではありません。実務上でも、遺留分を侵害している遺言書を添付して所有権移転登記の申請をしたとしても問題なく受理されます。

[SK008:相続]遺留分の割合

遺留分は「被相続人の財産の二分の一(直系尊属のみが相続人の場合は三分の一)を法定相続分で配分したもの」です。少し細かいですが、遺留分を計算する際の「被相続人の財産」には原則として「生前贈与」などの「特別受益」も含めます。そして主張できる相続人は「配偶者(夫や妻)」「子(代襲者も含む)」「直系尊属(親など)」だけであり、「兄弟姉妹」には遺留分がありません。

これを相続人の組み合わせ別でみると、

・配偶者のみ ・・・遺留分は[1/2]

・子のみ   ・・・遺留分は[1/2]

・配偶者と子 ・・・遺留分は[1/4](配偶者)、 [1/4](子)

・配偶者と兄 ・・・遺留分は[1/2](配偶者のみ)

・配偶者と父親・・・遺留分は[1/3](配偶者)、 [1/6](父親)

と、なります。

[SK007:相続]遺留分制度の概要

相続人となるべき人は法律で明確に定められていますが、「遺言」を残すことによって相続人以外の人にも財産を与えることができます。さらに遺言で残す財産の範囲も本人の自由となっています。

すると相続人のうちの誰かだけをえこひいきしたり、極論すれば相続人でもない他人(例えば愛人や知人など)に全財産を与えてしまうような事も起こりえることになります。しかしそれでは残りの相続人、例えば「残された家族」がお金に困り路頭に迷うことにもなりかねません。

そこで民法ではもともとの相続人(一部例外あり)が、ある程度の相続分を取り戻すことができるような制度を用意しました。これを「遺留分」制度と呼びます。

[SK006:相続]法定相続人以外への財産分与

民法で定められた相続人をざっくりと表現すると、「夫/妻」「子」「親」「兄弟姉妹」だけとなります。

ではそれ以外の人、例えば、よく働いてくれた家政婦や息子の嫁などに財産を残したい場合はどうすればよいのでしょうか。

それを実現する方法が「遺贈」です。遺贈とは遺言によって財産の承継者を指定することです。遺贈を受ける人を「受遺者」と呼び、受遺者は相続人であってもなくても別に構いません。

ところで、遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」があります。

 

「特定遺贈」

・特定の「財産」を指定して遺贈する

・債務は継承しない

・いつでも放棄できる

 

「包括遺贈」

・全体に対する「割合」を指定して遺贈する

・遺贈を受けた割合に応じた債務も継承する

・遺贈があったことを知ったときから3カ月以内に限り放棄できる

 

上記のように同じ遺贈でも、特定遺贈のほうが受遺者にとってメリットがあります。さらに特定遺贈により財産の分与先を個人ごとに指定してあるほうが、実際の手続きもスムーズに運びます。

財産を遺す立場の人は、法定相続人以外の人を受遺者に指定したい場合はもちろん、そうではない場合でも、特定遺贈の遺言書で自分の考えを明確にしておくほうが、遺された家族にとってもありがたいこととなるでしょう。

[SK005:相続]法定相続分

遺産相続の割合は民法で規定されています。これを『法定相続分』といいます。相続人別の法定相続分は以下の通りです。

配偶者と子    ・・・ 配偶者[1/2]、子[1/2]

配偶者と直系尊属 ・・・ 配偶者[2/3]、直系尊属[1/3]

配偶者と兄弟姉妹 ・・・ 配偶者[3/4]、兄弟姉妹[1/4]

配偶者のみ    ・・・ 配偶者[全部]

血族相続人のみ  ・・・ 順位が最上位の血族相続人[全部]

同一順位の人達が複数いた場合は頭数で平等に割ります。例えば上記の『配偶者と兄弟姉妹』のケースで、兄弟姉妹が3人いる場合、配偶者は1/2のままで変わりませんが、3人の兄弟は1/4をさらに3等分した1/12をそれぞれが相続することになります。

お客様からよくご質問をいただくのが、上記の『血族相続人のみ』のケースです。例えば、配偶者がいなくて、子1人、親2人、兄弟3人がいる場合はどうなると思いますか。この場合、第1順位の子が全部の財産を相続します。子1人、親2人、兄弟3人の全員で山分けになるのではないので注意しましょう。

[SK004:相続]法定相続人

『法定相続人』とは、民法で定める相続人のことです。

相続人が複数いる場合、その優先順位は民法で規定されています。配偶者は常に相続人になります。配偶者以外については、優先順位の高い順に以下の通りとなります。

第1順位 ・・・子

第2順位 ・・・直系尊属(父母など)

第3順位 ・・・兄弟姉妹

上位の順位の者が一人もいない時に、はじめて下位の順位の者が相続人となります。例えば子が一人もいない場合に初めて父母が相続人になります。この場合、兄弟姉妹は相続人にはなりません。この順位の考え方は、お客様から度々ご質問を頂戴しています。おさらいをしておきましょう。