[SK037:相続]一身専属権とは

一身に専属する権利(一身専属権)とは、その人個人の持つ権利義務のうち、その性質上、他の者に移転することのないものを指します。一身専属権は相続や譲渡ができません。

一身専属権のわかりやすい例としては自動車の運転免許が挙げられます。あたりまえのことですが、たとえ夫の全財産を相続した妻であっても、夫の運転免許証でクルマの運転ができるようになるわけではありません。

主に相続で問題となる一身専属権には、以下のものがあります。

■一身専属した権利義務の例

・生活保護の受給権
・委任関係における地位(委任者又は受任者としての地位)
・代理関係における地位(本人又は代理人としての地位)
・組合員、合名会社の社員、合資会社の無限責任社員の地位
・身元保証債務
・信用保証債務

[SK036:相続]遺言書作成がもっと身近になりました

遺言は『この人には財産を多く遺してあげたいけど、あの人には財産をあまり相続させたくない』というような場合に必要となります。

とはいえ、遺言を自分で書くのはどうしても敷居が高く面倒なイメージがあります。

実際、自分で遺言を書く、いわゆる自筆証書遺言では、以前から『本文と財産目録(預貯金、不動産など)をすべて自筆させることに無理がある』と言われていました。

例えば敷地権付きマンションの不動産登記などを間違いなく自筆することは、若い方でも難しく、ましてやご高齢の方であればなおさらです。

そんな中、平成31年1月13日より自筆証書遺言の書き方が変わりました。

これまでは全文自筆でなければ自筆証書遺言として認められなかったのですが、法改正後は『本文自筆+財産目録代筆』なども可能となりました。

この法改正により、一番面倒な財産目録の作成部分を行政書士にお願いできるようになりました。あとはご自身で本文を数行書いて押印するだけで遺言書が完成します。ずいぶんと身近になりました。

[SK036:相続]遺言執行者

遺言に従って実行する人を遺言執行者と言います。遺言執行者は家族であったり外部の専門家であったりと様々です。

遺言執行者は遺言の執行を全面的に行う権限を持ちます。そのため遺産は遺言執行者が責任を持って各相続人に分配することになっています。

遺言執行者が遺言書に書かれていたら他の者が勝手に遺言を執行してはいけません。遺言執行者へすぐに連絡を取りましょう。

遺言執行者が指定されていなかった場合は相続人達で協議して遺言を執行します。もし、遺言執行者があいまいでは困る、という場合には家庭裁判所に適任者を選任してもらうとよいでしょう。

[SK035:相続]自筆証書遺言の検認手続きの注意点

検認は家庭裁判所による遺言書の検証手続きです。家庭裁判所が遺言書の形状、加除訂正状態、署名、日付などをチェックして有効な書式であることを確認し、検印調書に記録をします。注意点としては、検認は検証手続きであるといっても、その遺言書がホンモノの遺言書であることを科学的に証明するような手続きではないということです。

とはいえ実務の上で検認手続きは大変重要です。これからの様々な相続手続の中で、検認された遺言書が何度も必要となってくるからです。例えば検認済証明のない遺言書では、不動産登記や銀行口座などの名義変更を受付けてもらえません。

また、封がされている自筆証書遺言を検認を受けずに勝手に開封してしまうと、(無効とまではなりませんが)後で過料(罰金)の処分を受けてしまいます。この点も注意しましょう。

とにかく自筆証書遺言を見つけたらすぐに家庭裁判所へ検認手続きの申請を済ませるようにしましょう。

[SK034:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(後妻の相続権)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

言い換えると、今回新たに導入された遺産分割の特例措置により、夫を亡くした妻は遺産分割の際に自宅を手放すことなく、安心して遺産相続をすることができるようになった、という事です。

しかしこれでは、夫が後妻を迎えていた場合、別の問題が懸念されます。例えば次の場合はどうでしょう。

ここに夫婦と息子ふたりの4人家族があります。ある日この夫婦が離婚をして妻が出て行きました。そして夫はすぐに若い後妻を迎えました。このあと夫はこの後妻に家を生前贈与し、ほどなくして亡くなくなりました。

さて、ふたりの息子たちからすると心中穏やかではありません。なぜなら今回の法改正による遺産分割の特例措置では、妻が夫から贈与された自宅は遺産分割協議の対象外です。息子たちからすると、急に現れた血の繋がりもない若い後妻に自宅を丸ごと持っていかれてしまうと思ってしまうのも無理ありません。実際、遺産相続で揉めやすいのはこのケースです。

そこで今回の法改正では対策が取られています。今回の遺産分割の特例措置は結婚期間が20年以上であることが条件となっています。

よって上記の事例でも、後妻の結婚期間が20年以上にならない限り特例措置の対象とはならず、自宅も含めて相続人全員で遺産分割を行わなければならない、という事になります。

[SK033:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(改正後の計算方法)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

例として自宅2,000万円と現金2,000万円、計4,000万円の財産を持つ夫が死亡したとします。夫には同居の妻と別居のふたり息子がいた場合、妻が生前贈与や遺言で自宅を譲り受けていたとすると、妻への遺産分割はどうなるでしょうか。

これまでの法律ですと、自宅だけで法定相続分を全額相続してしまっている妻は現金をいっさい相続できず、当面の生活費に困ってしまうという事が起きていたりしました。

そこで今回の法改正では、妻が夫から生前贈与や遺贈で譲り受けた自宅は遺産分割の対象外となりました。

法改正後の計算では、まず妻は生前贈与や遺贈で受けた2,000万円の自宅をそのままもらえます。さらに遺産分割の対象である現金2,000万円のうちの二分の一、すなわち現金1,000万円も妻は相続できます。よって妻は計3,000万円を相続します。そして息子は残りの現金1,000万円をふたりで500万円ずつ遺産分割します。

このように新しい法律では、相続によって配偶者が自宅を手放さなければならなくならないよう、配偶者を手厚く保護するようになりました。

[SK032:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(改正前の計算方法)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

これは、亡くなった夫(妻)と同居していた配偶者にとって、自宅というものは特別な意味を持っており、他の相続財産よりもより守られるべきである、との観点から法改正がなされたものです。

例として自宅2,000万円と現金2,000万円、計4,000万円の財産を持つ夫が死亡したとします。夫には同居の妻と別居のふたり息子がいた場合、妻が生前贈与や遺言で自宅を譲り受けていたとすると、妻への遺産分割はどうなるでしょうか。

まずは法定相続分の計算です。妻と息子、それぞれが二分の一(2,000万円)ずつです。息子は二人いるので息子一人あたりは四分の一(1,000万円)です。

ここで従来の法律ですと、妻に生前贈与や遺贈で譲った自宅も遺産分割の対象に含んで相続計算をします。このような自宅は共同相続人への遺産の前渡しと考えるためです。

すると妻は法定相続分2,000万円をすでに自宅という形で全額相続していることになります。これでは残った現金2,000万円はすべて息子二人に相続されてしまい、妻に現金が全く渡らなくなってしまいます。夫を失った妻は当面の生活費もなくなり困ってしまうでしょう。自宅を売却しておカネを工面しなくてはならなくなるかもしれません。

このように、これまでの法律では、夫の財産を相続することによって妻がかえって自宅を手放さなくてはならなくなる、ということも起こりえていたわけです。

[SK031:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(用語の説明)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

そこで今回は解りにくそうな用語のご説明をします。

まずは『贈与』と『遺贈』です。例えば夫が亡くなった夫婦の場合、贈与とは、夫が『生前に』財産を妻に与えることです。一般的に『生前贈与』と呼ばれているのはそのためです。他方、遺贈とは夫が『死後に』遺言によって財産を妻に与えることです。

次に『特別受益の持戻し』です。遺贈や贈与をすると遺産から外れてしまうと考えがちですが少し違います。たしかに、相続人でない第三者への遺贈や贈与は遺産から外れます。しかし今回のように夫から妻への贈与や遺贈は、相続人への遺産の前渡しによる『特別受益』として扱われます。

特別受益は遺産分割の計算をする際に一旦、相続財産に戻してから計算することになっています。これを『特別受益の持戻し』と言います。

[GH004:行政書士業務]上大岡の行政書士無料相談会

私が所属している神奈川県行政書士会の南・港南支部では、先日2月23日の土曜日に、上大岡で無料相談会を開催しました。

神奈川県行政書士会 南・港南支部の無料相談会の目印となるバナースタンド

場所は京急上大岡駅すぐ近くのウィング上大岡の3階です。京急線の改札口が近く、人通りが多い場所でした。

おかげさまで、11時の開始から大勢のお客様にお越しいただくことができました。ありがとうございました。私も相談員のひとりとしてたくさんのお客様からのご相談をお受けさせていただきました。

相談会場の全景。やや手作り感が漂っているのはご愛敬(!?)

参考までに、私がお受けしたご相談をいくつかご紹介します。(行政書士には守秘義務があります。お名前やご住所などを一切お聞きしていない匿名のご質問を選び、その概要のみを掲載しています。)

・「夫婦ふたり暮らしで住んでいる今の自宅を壊して新たに家を建て直そうとしたら、実はその家は父親と伯父と自分との3人の共有財産だったことが分かった。ずいぶん前に2人は他界しているのだが勝手に家を壊していいの?」

・「相続した財産を姉妹ふたりで分け合おうとして戸籍を調査したら、聞いたことのない腹違いの姉がいたことが分かった。しかし本人と連絡が取れずどうすればいいのかわからない。」

・「息子のうち長男の方が認知症で入所してしまった。自分達夫婦も今後どうなるかわからず不安なので、次男に面倒をみてもらえるよう、後見人になってもらうにはどうしたらいいの?」

このように、かなり具体的なご相談をたくさんいただきました。短い時間の応対ではありましたが、帰り際におっしゃっていただけた「ありがとう!」の一言がとても嬉しく、「この仕事をやっていてよかった!」と改めて実感しました。

半年に一度、同様の無料相談会を開催しています。開催が近づきますと上大岡駅のバスターミナルにもポスターを貼りだします。ご興味のあるかたはぜひお気軽に無料相談にお越しください。次回もお待ちしております。

[SK030:相続]配偶者居住権における修繕費と改築費

相続の新制度として2020年4月から始まる配偶者居住権。これは、相続対象の家を居住権と所有権とに分け、配偶者が居住権だけを相続できる制度です。この場合、家の所有権は別の共同相続人が相続します。居住権を持つ配偶者は所有権を持たずともこの家に住み続けることができます。(→[SK029:相続]配偶者居住権

さて、家に住み続けていると、様々な修繕・維持費がかかります。場合によってはリフォーム・改築などが行われることもあるでしょう。そこで問題となるのは、いったい誰がこれらの費用を負担することになるのかということです。

もし自分が所有する家に自分で住んでいるのであれば、家に関して自分が費用負担をすることに何の問題もありません。しかし今回は居住権と所有権が別の人のもとにあります。この場合の費用負担者は、以下のように考えることになっています。

<費用負担者>

●修繕・維持費    ⇒ 居住権を持つ者
●リフォーム・改築費 ⇒ 所有権を持つ者

なお、修繕・維持費とは屋根やトイレなど、もともと家として不可欠だったものが壊れてしまった時に、元の状態に戻す費用のことを指します。他方、リフォーム・改築費とは屋根にソーラーパネルを新設したりトイレをウォッシュレットに取り替えたりするといった、元の状態を超える価値を加える費用のことを指します。