[SK035:相続]自筆証書遺言の検認手続きの注意点

検認は家庭裁判所による遺言書の検証手続きです。家庭裁判所が遺言書の形状、加除訂正状態、署名、日付などをチェックして有効な書式であることを確認し、検印調書に記録をします。注意点としては、検認は検証手続きであるといっても、その遺言書がホンモノの遺言書であることを科学的に証明するような手続きではないということです。

とはいえ実務の上で検認手続きは大変重要です。これからの様々な相続手続の中で、検認された遺言書が何度も必要となってくるからです。例えば検認済証明のない遺言書では、不動産登記や銀行口座などの名義変更を受付けてもらえません。

また、封がされている自筆証書遺言を検認を受けずに勝手に開封してしまうと、(無効とまではなりませんが)後で過料(罰金)の処分を受けてしまいます。この点も注意しましょう。

とにかく自筆証書遺言を見つけたらすぐに家庭裁判所へ検認手続きの申請を済ませるようにしましょう。

[SK034:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(後妻の相続権)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

言い換えると、今回新たに導入された遺産分割の特例措置により、夫を亡くした妻は遺産分割の際に自宅を手放すことなく、安心して遺産相続をすることができるようになった、という事です。

しかしこれでは、夫が後妻を迎えていた場合、別の問題が懸念されます。例えば次の場合はどうでしょう。

ここに夫婦と息子ふたりの4人家族があります。ある日この夫婦が離婚をして妻が出て行きました。そして夫はすぐに若い後妻を迎えました。このあと夫はこの後妻に家を生前贈与し、ほどなくして亡くなくなりました。

さて、ふたりの息子たちからすると心中穏やかではありません。なぜなら今回の法改正による遺産分割の特例措置では、妻が夫から贈与された自宅は遺産分割協議の対象外です。息子たちからすると、急に現れた血の繋がりもない若い後妻に自宅を丸ごと持っていかれてしまうと思ってしまうのも無理ありません。実際、遺産相続で揉めやすいのはこのケースです。

そこで今回の法改正では対策が取られています。今回の遺産分割の特例措置は結婚期間が20年以上であることが条件となっています。

よって上記の事例でも、後妻の結婚期間が20年以上にならない限り特例措置の対象とはならず、自宅も含めて相続人全員で遺産分割を行わなければならない、という事になります。

[SK033:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(改正後の計算方法)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

例として自宅2,000万円と現金2,000万円、計4,000万円の財産を持つ夫が死亡したとします。夫には同居の妻と別居のふたり息子がいた場合、妻が生前贈与や遺言で自宅を譲り受けていたとすると、妻への遺産分割はどうなるでしょうか。

これまでの法律ですと、自宅だけで法定相続分を全額相続してしまっている妻は現金をいっさい相続できず、当面の生活費に困ってしまうという事が起きていたりしました。

そこで今回の法改正では、妻が夫から生前贈与や遺贈で譲り受けた自宅は遺産分割の対象外となりました。

法改正後の計算では、まず妻は生前贈与や遺贈で受けた2,000万円の自宅をそのままもらえます。さらに遺産分割の対象である現金2,000万円のうちの二分の一、すなわち現金1,000万円も妻は相続できます。よって妻は計3,000万円を相続します。そして息子は残りの現金1,000万円をふたりで500万円ずつ遺産分割します。

このように新しい法律では、相続によって配偶者が自宅を手放さなければならなくならないよう、配偶者を手厚く保護するようになりました。

[SK032:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(改正前の計算方法)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

これは、亡くなった夫(妻)と同居していた配偶者にとって、自宅というものは特別な意味を持っており、他の相続財産よりもより守られるべきである、との観点から法改正がなされたものです。

例として自宅2,000万円と現金2,000万円、計4,000万円の財産を持つ夫が死亡したとします。夫には同居の妻と別居のふたり息子がいた場合、妻が生前贈与や遺言で自宅を譲り受けていたとすると、妻への遺産分割はどうなるでしょうか。

まずは法定相続分の計算です。妻と息子、それぞれが二分の一(2,000万円)ずつです。息子は二人いるので息子一人あたりは四分の一(1,000万円)です。

ここで従来の法律ですと、妻に生前贈与や遺贈で譲った自宅も遺産分割の対象に含んで相続計算をします。このような自宅は共同相続人への遺産の前渡しと考えるためです。

すると妻は法定相続分2,000万円をすでに自宅という形で全額相続していることになります。これでは残った現金2,000万円はすべて息子二人に相続されてしまい、妻に現金が全く渡らなくなってしまいます。夫を失った妻は当面の生活費もなくなり困ってしまうでしょう。自宅を売却しておカネを工面しなくてはならなくなるかもしれません。

このように、これまでの法律では、夫の財産を相続することによって妻がかえって自宅を手放さなくてはならなくなる、ということも起こりえていたわけです。

[SK031:相続]配偶者への自宅の贈与・遺贈が変わります(用語の説明)

この度の民法改正により、2019年7月1日からは配偶者への自宅の贈与・遺贈が特別受益の持戻しの対象外になりました。

そこで今回は解りにくそうな用語のご説明をします。

まずは『贈与』と『遺贈』です。例えば夫が亡くなった夫婦の場合、贈与とは、夫が『生前に』財産を妻に与えることです。一般的に『生前贈与』と呼ばれているのはそのためです。他方、遺贈とは夫が『死後に』遺言によって財産を妻に与えることです。

次に『特別受益の持戻し』です。遺贈や贈与をすると遺産から外れてしまうと考えがちですが少し違います。たしかに、相続人でない第三者への遺贈や贈与は遺産から外れます。しかし今回のように夫から妻への贈与や遺贈は、相続人への遺産の前渡しによる『特別受益』として扱われます。

特別受益は遺産分割の計算をする際に一旦、相続財産に戻してから計算することになっています。これを『特別受益の持戻し』と言います。

[SK030:相続]配偶者居住権における修繕費と改築費

相続の新制度として2020年4月から始まる配偶者居住権。これは、相続対象の家を居住権と所有権とに分け、配偶者が居住権だけを相続できる制度です。この場合、家の所有権は別の共同相続人が相続します。居住権を持つ配偶者は所有権を持たずともこの家に住み続けることができます。(→[SK029:相続]配偶者居住権

さて、家に住み続けていると、様々な修繕・維持費がかかります。場合によってはリフォーム・改築などが行われることもあるでしょう。そこで問題となるのは、いったい誰がこれらの費用を負担することになるのかということです。

もし自分が所有する家に自分で住んでいるのであれば、家に関して自分が費用負担をすることに何の問題もありません。しかし今回は居住権と所有権が別の人のもとにあります。この場合の費用負担者は、以下のように考えることになっています。

<費用負担者>

●修繕・維持費    ⇒ 居住権を持つ者
●リフォーム・改築費 ⇒ 所有権を持つ者

なお、修繕・維持費とは屋根やトイレなど、もともと家として不可欠だったものが壊れてしまった時に、元の状態に戻す費用のことを指します。他方、リフォーム・改築費とは屋根にソーラーパネルを新設したりトイレをウォッシュレットに取り替えたりするといった、元の状態を超える価値を加える費用のことを指します。

[SK029:相続]配偶者居住権

このたび40年ぶりに民法が改正され、来年の2020年4月より『配偶者居住権』という相続制度が新たに開始されることになりました。

配偶者居住権は、遺産相続した配偶者の財産を保護する制度のひとつです。詳細は後述しますが、これまでの民法では例えば次のようなケースなどで問題が起こっていました。

例)夫が4000万円の家と2000万円の現預金からなる総額6000万円の財産を遺して死亡。夫には妻と子供が二人。妻は夫の家に同居。子供はふたりとも独立しており別居。遺言書は遺さなかった。

まずこのケースでは遺言書がないので民法で規定する法定相続分で遺産を分割します。法定相続分は妻と子供でそれぞれ半分ずつです。妻3000万円、子供3000万円(1500万円×2人)で相続します。

さて、妻は夫の死後もそのままその家に住み続けたいと思っていました。なのにここで子供達が自分達の法定相続分である3000万円を要求してきました。こうなってしまうと現預金は2000万円しかないので足りません。妻(すなわち子供達の母親)は仕方なく家を売って不足している1000万円を子供達に渡すはめになりました。このように相続によっては、妻は夫を亡くした上に住む家までも失くすという悲惨な事が実際に起こっていました。

そこで新設されたのが『配偶者居住権』です。これはまず相続財産の家を『居住権』と『所有権』の二つに分けます。居住権は住む権利、所有権は持つ権利です。そして例えば配偶者には居住権を、子供達には所有権を与えます。

こうすることで妻は家の所有権こそ失いますが、これまでと変わらず家に住み続けることができます。居住権は妻本人が亡くなるまで存続します。

それに家の所有権はあくまで子供達にあります。つまり子供達にとっても自分の母親に家を売らせて困らせたりすることなく自分たちの相続分を満たすことができます。まさにWin Winですね。

なお、総務省の指針によると、居住権の価格は主に配偶者の年齢を考慮した上で決定されます。年齢が高いほど居住期間が短くなるだろうということで居住権は安くなります。

[SK028:相続]自筆証書遺言の検認の申立て

検認とは裁判所が行う、遺言書の検証手続きのことです。自筆証書遺言の偽造や変造を防止し、その存在を相続人達に通知します。検認の申立て手続きについては以下の通りです。遺言書を発見したら、まずは家庭裁判所に連絡しましょう。


<検認の申立て手続き>

申立先:家庭裁判所(遺言者の最後の住所地)

期限:遺言書発見後すみやかに

必要書類等:申立書、遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、相続人目録、遺言書、申立人の印鑑、印紙代・切手代等

[SK027:相続]遺言書の開封

遺品整理をしていると仏壇の引き出しなどから遺言書が見つかることがあります。すぐ開封して中身を確認したいと思うでしょうが、少し待ってください。

まず最初に封書の裏をみて封印の有無を確認してください。もし封印がなければ開封してもよいのですが、封印がされていた場合には勝手に開けてはいけません(勝手に開封すると過料という罰則金が課せられてしまいます)。自筆証書遺言は家庭裁判所で検認の手続きが必要です。開封は家庭裁判所で行います。まずは家庭裁判所に連絡し検認の申立てを行いましょう。

なお、2019年1月13日以降は法改正により自筆証書遺言の作成方法や保管方法が一部変更されました(→[SK026:相続]自筆証書遺言の作成が楽になります)。そのため今後はこのような家庭裁判所による検認が不要になるケースも増えてくることでしょう。

[SK026:相続]自筆証書遺言の作成が楽になります

現状、有効な遺言書が遺されている割合はわずか10%しかありません。これはそもそも面倒なので遺言書を書かなかったり、せっかく書いたのにいざその時に封を開けたら不備があった、等が理由だと言われています。ただしい遺言書が遺されていれば防げたであろう相続トラブルが多発している今日としては、残念な数字となっています。

そんな中、今週日曜日、2019年1月13日から自筆証書遺言の作成方法が変わります。ひとことで言うと、作成が楽になります。

法改正前後の自筆証書遺言の作成方法の違いは以下の通りです。

<改正前>

・全文自筆で作成(パソコン作成不可)

・開封時に家庭裁判所の検認(立ち合い)がいる

・自宅に原本保管(書斎デスクや仏壇の引き出しの中)

<改正後>

・財産目録はパソコン作成可(署名は自筆)

・法務省に原本保管(2020年7月以降)

・開封時に家庭裁判所の検認がいらない


今回の法改正により、自筆証書遺言における財産目録の作成については自筆である必要がなくなりました。このため一番面倒だった財産目録の作成を行政書士に丸投げすることができるようになったのです。ご興味のある方は一度ご検討されてみてはいかがですか。