[HM001:民法大改正]民法大改正

民法は1896年(明治29年)に制定されました。それから120年あまりが経過し、その間に社会・経済環境は大きく変化しました。しかし民法は(途中で細部の修正はあったものの)、この間ずっと明治時代の条文のまま使われ続けてきました。

このような背景の中、時代の変化に対応した民法の大幅改正を望む声が法曹界を中心に常々あがっていました。そしてついに、2017年(平成29年)5月に「民法の一部を改正する法律」が成立しました。この法律による改正民法は2020年4月1日より施工されます。

今回の民法改正は一般的には「民法大改正」とも呼ばれおり、主に債権法を中心に大幅な見直しがなされたものです。債権法には契約等に関する最も基本的なルールが定められています。

併せて、今日の裁判や取引の実務に即したルールを条文に取り入れたり、長くて複雑な条文を複数の項に分割して分かりやすくするなどの改正も行われました。

なお、本ブログのタイトルが[HM]で始まる記事では、今後もこの民法改正の内容を条文ごとに掲載していきます。

[SG001:行政書士試験]賃貸借の解除と転貸借

独立開業されている方たちは個人で賃貸マンションの一室を借りて、そこを事務所にしている方が結構いらっしゃいます。今回はこういった事務所が転借物件だった場合の契約解除に関するトラブルについてみてみましょう。

<事例>
マンションの区分所有者Aは不動産会社Bへマンションの一室を賃貸していました。そしてBは漫画家Cにこの部屋を転貸していました。ところがBは業績が悪化したためAへの賃料を滞納するようになり、とうとう昨年6月にBはAとの契約を解除されてしまいました。

AはBとの契約解除の一か月後、昨年7月にCにもそのことを告げて出て行ってもらいたい旨を伝えました。しかし、Cは仕事が忙しく、ついその後も事務所を利用し続けていました。結局Cが引っ越しをしてそのマンション出て行ったのは今年4月でした。

引っ越し後しばらくして、C宛てに封書が届きました。それはBからの請求書で、「昨年7月から今年4月まで事務所として利用していた10カ月分の家賃が支払われていないので至急支払うように」という内容でした。Cとしてもその部屋を使い続けていたのは事実でしたから家賃を支払う事に何の依存もありませんでした。そこでCがBへの支払い手続きを進めようとしていたところ、翌日、Aからも同じような内容の請求書が来てしまいました。

このようにCは事務所の家賃をAとBから二重に請求を受けてしまいました。Cはマンションの区分所有者Aと不動産会社Bのどちら宛てに家賃を支払えばよいのでしょうか。

 

 

答:マンションの区分所有者Aに支払えばよい

判例ではBがAへ家賃を滞納するなどして信頼関係が破壊されて契約解除に至った場合、BC間の転貸借契約も当然に終了すると判示しています。ですから漫画家Cが家賃を払う相手はBではなくAになります。

この場合、法律的には、CがAに支払ったおカネは賃料ではありません。Cが権原もないのに10か月間も部屋を占有し続けたことによる不当利得返還債務として転借料相当額を支払ったことになります。

[TS006:宅建試験]宅建業法の確認テスト

毎年50問出題される宅建試験。そのうち宅建業法が占める割合は20問!全体の40%といえばかなりのウェイトです。そこで今回は宅建業法で頻出の基本知識からの問題です。最終盤のこの時期、即答できるかどうか、日頃の学習の成果をチェックしてみましょう。

 

以下の各文章について宅建業法上の正誤と理由を答えなさい。

 

問01.登記名義人は37条書面(契約書面)に記載する必要がない

答.〇 登記名義人は35条書面(重要事項説明書)の記載事項

 

問02.契約の解除について定めなかったので35条書面にその旨を記載したが37条書面には記載しなかった

答.〇 契約の解除は37条書面では相対的記載事項

 

問03.1億円の完成宅地の売買契約において手付金を1千万円とした場合、保全措置が必要である

答.× 完成物件の手付金は、代金の10%もしくは1千万円を「超えた」場合に全額保全が必要

 

問04.債務不履行による損害賠償額の予定額が代金の10分の2を超えた場合、その予定額全額が無効になる

答.× 代金の10分の2を「超えた部分のみ」が無効となる

 

問05.消費税免税業者の宅建業者Aが、宅地1000万円、建物2160万円の税込物件を甲乙間で媒介した場合、Aが甲から受ける報酬は99万720円である

答.〇 ((1000万円+2160万/1.08)×3%+6万円)×1.032=99万720円

 

問06.A県知事免許の宅建業者がB県に支店を出したときは30日以内にA県知事に届けなければならない

答.× 国土交通大臣免許に免許換えしなければならない

 

問07.宅建業の業務停止処分後に自ら業務を廃止しても処分後5年間は宅建業の免許が受けられない

答.× 免許取り消し処分ではなく業務停止処分にすぎないので、免許は受けられる

 

問08.宅建業の営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者Aは、Aの法定代理人Bが2年前に宅建業法違反で過料に処せられている場合でも、宅建取引士の登録を受けられる

答.× 未成年者はもともと不可

 

問09.基準日に係る資力確保措置を怠り、またはその状況を届け出ない宅建業者は、当該基準日以後、新たな新築住宅の売買契約を結ぶことができない

答.× 当該基準日の翌日から50日を経過した日以後

[TS005:宅建試験]媒介契約

宅建業法にはいわゆる「三大書面」と呼ばれるものが規定されています。

★三大書面

・媒介契約書(34条)

・重要事項説明書(35条)

・契約書(37条)

 

このうちの「媒介契約」についてはお客様への拘束の度合いによって次の3つの形態に分類されます。「→」は暗記ポイントです。

★媒介契約の形態

・一般媒介

→重ねて依頼、自己発見

・専任媒介

→      自己発見、3カ月、2週間、レインズ、7日、遅滞なく

・専属専任媒介

→           3カ月、1週間、レインズ、5日、遅滞なく

 

次に媒介契約書への記載事項です。ここでは覚えにくいものだけを列挙します。

★媒介契約書の記載事項(抜粋)

・評価額(意見は口頭でもよい)

・解除

・報酬

[TS004:宅建試験]建築基準法の建築確認

宅建試験では建築基準法から毎年2問の出題があります。建築基準法は「単体規定」「集団規定」「建築確認」に分かれています。ただし単体規定は細かい割に出題されないことがちらほら。ですから基本だけを押さえて後回しにしましょう。まずは建築確認から。

建築確認は単体規定や集団規定が実際に守られるように設けられた手続きのことです。これはすべての建築物に必要な手続きかというとそうではなく、例えばちっぽけな建物などは建築確認がいりません。試験ではこの建築確認が必要かどうかについて事例を挙げて質問してきます。その判断に必要な暗記ポイントは以下のとおりです。

 

★一定の特殊建築物

全国どこでも

用途に供する面積100㎡超

ホテル・映画館・自動車車庫…

新築・10㎡超増改築・移転・大規模修繕・大規模模様替え・用途変更

 

★大規模建築物

全国どこでも

木造3階以上・延べ面積500㎡超・高さ13m超・軒9m超

コンクリート2階以上・200㎡超

新築・10㎡超増改築・移転・大規模修繕・大規模模様替え(用途変更は確認不要)

 

★上記以外の(特殊でも大規模でもない)建築物

都市計画区域内等のみ

新築・10㎡超増改築・移転

防火地域・準防火地域の増改築は10㎡以下もすべて実施

[TS003:宅建試験]平成30年度宅建試験の法改正情報

早いもので平成30年度宅建試験日まであとひと月ちょっととなりました。そこで今年度の宅建試験に関連する法改正の要点を箇条書きにしておきました。

 

①低廉な空き家等の売買又は交換の媒介に関する報酬改正

・400万円以下の土地建物

・報酬額18万円(税込み 194,400円)

・売主側のみ

・契約時の合意

 

 

②IT重説

・貸借のみ

 

 

③インスペクション

・媒介契約書面

→あっせん

 

・35条書面

→建物状況調査(~1年)の有無と結果

→ 設計図書、点検記録その他書類の保存の状況(×貸借)

 

・37条書面

→建物の構造耐力上主要な部分等の状況(×貸借)

 

 

④田園住居地域

・農業の利便の増進

・第一種・第二種低層住居専用地域+産直・飲食店

[TS002:宅建試験]住所変更

宅地建物取引士の住所変更に関する問題です。これから2問出題します。それぞれの違いがわかりますか。

 

例題1.宅建過去問 H20 問33 選択肢3

次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。

甲県知事から宅地建物取引士証(以下この問において「宅建士証」という。)の交付を受けている宅地建物取引士は、その住所を変更したときは、遅滞なく、変更の登録の申請をするとともに、宅建士証の書換え交付の申請を甲県知事に対してしなければならない。

答え:正しい。

 

例題2.宅建過去問 H23 問29 選択肢3

宅地建物取引士の登録に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。

宅地建物取引業者(甲県知事免許)に勤務する宅地建物取引士(甲県知事登録)が、乙県に住所を変更するとともに宅地建物取引業者(乙県知事免許)に勤務先を変更した場合は、乙県知事に登録の移転の申請をしなければならない。

答え:誤り。(「登録の移転の申請をしなければならない。」→「登録の移転の申請をすることができる。」)

 

宅地建物取引士の住所変更関連では、

住所変更・・・「変更の登録の申請」をしなくてはならない(義務)

他県への勤務先変更・・・「登録の移転の申請」をしてもよい(任意)

の違いを押さえておきましょう。

[TS001:宅建試験]宅建試験の論点整理

本ブログでタイトルが[TS]ではじまる記事では、宅建試験で過去に出題された問題を様々な切り口から横断的に取り上げます。参考書のように順番通りの網羅的な内容ではありません。ひっかかりやすい論点を並べて比較したり整理したりすることで記憶の定着を図ります。抜き打ちテストの感覚で力試しをしてみてください。

[KQ005:建設業許可]知事免許と大臣免許

建設業許可免許は許可を受ける主体の違いによって2種類に大別できます。

1.都道府県知事免許(知事免許)

2.国土交通大臣免許(大臣免許)

上記二つの免許に優劣はありません。許可内容に違いはありませんので、通常は知事免許を申請することになります。

ただし、建設業の営業所が複数あって、それらが複数の都道府県に点在している場合には大臣免許が必要となります。

そこで間違えやすいのは、『複数の営業所があるが、すべて同じ都道府県内に存在している場合』です。この場合は大臣免許ではなく、知事免許を申請します。

話は変わりますが、この考え方は宅建業免許にも通じています。宅建試験での頻出ポイントなので、受験される方はいちど確認しておきましょう。